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年末調整を行うために、従業員は会社に対して次の3
つの用紙を提出します。
●給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
●給与所得者の基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼
所得金額調整控除申告書
●給与所得者の保険料控除申告書
提出書類への押印は不要です。
また、2年目以降の住宅ローン控除を受ける人は、税
務署から送られてきた住宅借入金等特別控除申告書と金
融機関の借入金残高証明書も会社に提出します。
会社によっては年調ソフトによる電子データでの提出
が可能です。
年末調整担当者は、国税庁のサイトからエクセル版の
「年末調整計算シート」で計算することができます。
(1)年末調整とは
会社は、毎月の給料や賞与を支払う際に、従業員の扶
養家族の人数等に応じて、所得税を概算額で給料等から
天引きすることとなっています。
毎月天引きしている金額は概算額ですから、12月の給
料支給時に1年分の所得税額を計算し直し、計算した所
得税額と毎月の概算額との差額を精算します。
この精算手続きのことを「年末調整」といいます。
(2)よくある間違い~扶養控除等申告書編~
●令和5年分扶養控除等申告書を使っている
令和5年分の扶養控除等申告書を使って、令和4年分
の年末調整をしている方は、注意してください。
控除対象扶養親族は、16歳以上を記載しますが、令和
5年分の申告書には、「平20.1.1以前生」と記載されて
います
令和4年分の年末調整で扶養親族になるのは、「平19.
1.1以前生」の16歳以上になります。
15歳以下の扶養親族は、用紙下部の「住民税に関する
事項」に記入します。
生年月日がきちんと記載してあれば、年末調整担当者
が判断できます。
●マイナンバーが記載されていない
扶養控除等申告書を記入する場合には、マイナンバー
(個人番号)の記載が必要になります。
本人だけでなく、扶養親族のマイナンバーも必要です。
ただし、前年以前にマイナンバーを記載し、会社が一
覧表やデータで管理している場合は、記載不要です。
●会社のマイナンバーが記載されていない
給与を支払う会社のマイナンバー(法人番号)を記載
してください。
なお、個人事業の場合は、マイナンバー(個人番号)
を記載してはいけません。
●年収が1,095万円以下なのに源泉控除対象配偶者の記
載がない
本人の年収が1,095万円(所得900万円)以下、かつ、
配偶者の年収が150万円(所得95万円)以下を、源泉控
除対象配偶者といいます。
夫婦の年収が基準以下の場合は、配偶者の氏名を記載
します。
●扶養親族の所得金額欄に年収を記載している
所得と年収は違います。扶養親族になれのは所得が48
万円以下の人です。
所得とは、収入から経費を引いた金額をいいます。
パートやアルバイトの場合、経費に相当する金額とし
て、最低55万円が与えられています。
パート収入が年間103万円の場合、所得は、103万円-
55万円=48万円となり、所得が48万円以下ですから、扶
養親族に該当することとなります。金額欄には「48万
円」と記載します。
パート収入が103万までなら扶養になれる103万円の壁
はここから来ています。
パート収入は気にされている方が多いのですが、大学
生の子供がいる場合には、子供のアルバイト収入にも注
意してください。
稼ぎすぎていると、扶養親族に該当しなくなり、後で
追徴課税されることがよくあります。
また、年金の場合の、経費に相当する金額は、65歳以
上で最低110万円、65歳未満で最低60万円とですので、
年金額が158万円(65歳以上)又は108万円(65歳未満)
の場合に、扶養親族に該当します。
●「同居老親等」に○が付いていない
70歳以上の父母や祖父母を扶養している場合には、扶
養控除の金額が増加します。
さらに、同居しているかどうかでも金額が変わってき
ます。
同居しているのに、ここに印が付いていないと控除額
で損をすることとなります。
老人ホームなどに入居されている場合には、同居では
ありませんので、こちらは○を付けてはいけません。
一時的に入院している場合は同居です。
●「特定扶養親族」に○が付いていない
19歳以上22歳以下の方を扶養している場合には、扶養
控除の金額が増加します。該当する場合には、○を付け
てください。
生年月日がきちんと書かれていれば判断はできますが、
たまに、生年月日も書かれていないときがあります。
●障害の内容が書かれていない
本人や配偶者が障害者であったり、障害者を扶養して
いたりする場合には、控除額が増加します。障害者であ
る旨を記載する欄がありますので、そちらもきちんと記
入してください。
また、障害の程度により、控除額も変わってきます。
障害者手帳等に書かれている等級も記載するようにして
ください。
15歳以下の子供は、扶養控除の対象にはなりませんが、
障害者控除の対象になりますので、忘れずに記載してく
ださい。
●ひとり親や寡婦を記載していない
配偶者がいない場合には、控除額が増加することがあ
ります。
所得が48万円以下である子供と、一緒に生活している
ことが条件です。
自分の所得が500万円以下でなければいけません。
収入が給与のみであれば、給与収入約677万円以下が
対象です。
入籍していなくても、住民票に未届の夫又は未届の妻
の記載がある場合は、対象になりません。
該当する場合は「ひとり親」欄にチェックマークを付
けてください。
夫と死別して、その後結婚していない場合は、所得が
500万円以下であれば、寡婦控除が受けられます。
夫と離婚後結婚していなくて、扶養親族がいて、かつ、
所得が500万円以下であれば、寡婦控除が受けられます。
該当する場合は「寡婦」欄にチェックマークを付けて
ください。
●外国の扶養親族の証明書類を提出していない
海外に居住する親族の扶養控除、配偶者控除、障害者
控除を受ける場合は、「親族関係書類」と「送金関係書
類」も提出しなければいけません。
親族関係書類とは、戸籍の附票、パスポートや外国政
府が発行した書類で親族関係がわかる書類です。
送金関係書類とは、金融機関やクレジットカード会社
の書類で、生活費や教育費に充てたことを明らかにする
書類です。
(3)よくある間違い~基礎控除申告書編~
●年収2,695万円超なのに基礎控除申告書に記載してい
る
年間所得2,500万円超の場合は、基礎控除申告書に金
額を記載しても、基礎控除は受けられません。
給与収入の場合は、年収2,695万円以下の場合に記載
してください。
なお、給与以外に収入がある場合は、他の所得も合算
して判断します。
所得が1,000万円を超える場合は、配偶者控除等申告
書の記載は不要です。
●会社のマイナンバーが記載されていない
給与を支払う会社のマイナンバー(法人番号)は必要
です。
ただし、個人事業の場合は、マイナンバー(個人番
号)を記載してはいけません。
(4)よくある間違い~配偶者控除等申告書編~
●年収1,000万円超なのに配偶者控除等申告書に記載し
ている
年収1,195万円(所得1,000万円)を超える場合には、
配偶者控除も配偶者特別控除も受けられません。
また、配偶者の所得が133万円を超える場合も、控除
を受けられません。
配偶者の収入が給与だけの場合は、年収2,015,999円
未満であれば、控除の対象です。
●配偶者控除等の対象なのに、「扶養控除等申告書」の
みで、「配偶者控除等申告書」を提出しない
配偶者控除と配偶者特別控除がいくら適用されるかは、
本人と配偶者の両方の所得が基準になります。
申告書提出時の見積額でかまいませんから、年収や所
得を記載するようにしましょう。
後日所得が確定して控除額が変わった場合は、訂正が
可能です。
翌年1月31日までであれば、勤務先で再年末調整をし
てもらいます。
それ以降は、自分で確定申告をすれば、差額が精算さ
れます。
なお、配偶者が海外に居住している場合は、扶養親族
同様、親族であることと送金の証明が必要です。
●年金を記載しない
年金をもらっている場合には、雑所得になります。
65歳以上の場合は、年金収入から110万円を引いた金
額が所得になります。
65歳未満の場合は、年金収入から60万円を引いた金額
が所得になります。
ただし、65歳未満で年金収入が130万円を超える場合
には、計算が必要になりますので、裏面を確認してくだ
さい。
●配偶者控除等の金額が間違っている
配偶者控除及び配偶者特別控除は、配偶者の所得の他
に本人の所得も関係してきます。
判定がわかりづらい場合は、年末調整担当者が判断で
きるように、配偶者と本人両方の所得又は収入だけは記
載してください。
(5)よくある間違い~所得金額調整控除申告書編~
●年収850万円超なのに所得金額調整控除申告書に記載
していない
給与の年収が850万円超で23歳未満の扶養親族がいる
場合は、所得金額調整控除の対象です。
15歳以下でも扶養親族がいれば対象です。
また、本人、配偶者、扶養親族のいずれかが特別障害
者の場合にも、控除を受けられます。
該当する欄にチェックマークを付けてください。
合わせて、扶養親族や障害者手帳の内容も記載してく
ださい。
(6)よくある間違い~保険料控除申告書編~
●保険契約の内容を区分していない
生命保険料控除は、生命保険の種類によって、「一
般」、「介護医療」、「個人年金」の3種類に分かれて
います。
なお、「一般」、「介護医療」、「個人年金」の区別
は、証明書に、その保険がどれに該当するか記載されて
います。
10、11月頃に生命保険会社から届いた控除証明書を確
認してください。
証明書がマイナポータルから電子データで提供される
場合があります。
「年金保険」という名称の保険でも、「一般」に該当
することもあります。
「医療保険」という名称の保険でも、「一般」に該当
することもあります。
こくみん共済等の共済保険の場合には、「介護」に該
当することもあります。
平成24年1月1日以後の新たな保険契約の締結の有無や
契約の変更の有無によって、控除額の計算式が変わりま
す。
●自宅以外の地震保険料を控除している
賃貸用や事業用の不動産の地震保険料は、いくら証明
書があっても控除の対象になりません。
地震保険料控除は、居住用不動産が対象です。
●損害保険料控除もあります
平成19年分より、損害保険料控除は廃止されました。
ただし、平成18年12月31日までに契約した長期損害保
険契約については、19年以降も控除できます。地震保険
料控除欄の「旧長期」に、○を付けてください。
「長期」になるのは、保険期間が10年以上で、かつ、
満期返戻金があるものです。
期間が10年以上でも、満期返戻金が無いものもありま
すので、その場合は対象になりません。
●平成18年までに契約した地震保険の二重控除
平成18年12月31日以前に契約した地震保険には、長期
損害保険料控除の対象になるものもあります。1つの保
険料の支払いで2つの控除は受けられませんので、どち
らか有利な方を選択します。
農協の建更等の証明書は、1つの保険契約で両方の証
明金額が記載されていますので注意が必要です。
●自分で払った健康保険料等を記載していない
年の途中で無職の期間があった場合には、健康保険料
や国民年金を自分で納付することになります。この自分
で払った保険料は、申告が無いと会社では一切把握でき
ません。
用紙の右側に記載する欄がありますので、自分で払っ
た金額を記載してください。
親が子供の国民年金を払ってあげた場合も、親の控除
対象になります。
なお、国民年金は、控除証明書か領収証の添付が必要
です。健康保険は、領収証等の添付は必要ありません。
給料から社会保険料が天引きされている人は、会社で
計算しますので記載する必要はありません。
●2年分前納の国民年金保険料の控除額を記載していな
い
国民年金保険料を2年分前納した場合には、2年分全
額を控除するか、年分ごとに控除するか、選択できます。
2年分全額控除の場合は、前納した金額を記載してく
ださい。
年ごとに控除したい場合は、「社会保険料(国民年金
保険料)控除額内訳明細書」を添付する必要があります。
●自分で払った確定拠出年金(iDeCo)や小規模企業共
済を記載していない
自分で払ったiDeCoや小規模企業共済の掛金は、申告
が無いと会社では一切把握できません。
用紙の右下に記載する欄がありますので、自分で払っ
た金額を記載してください。
(5)よくある間違い~計算編~
●給与の締日で計算する
例えば12月31日締め、翌年1月10日払いの給与は、令
和5年分の給与となります。
給与の締日と支給日が月をまたぐ場合には、年末調整
は支給日で考えます。
12月支給分までが、その年の年末調整の対象になりま
す。
●令和19年まで復興特別所得税を上乗せ
通常の税率で計算した所得税に102.1%をかけて、所
得税と復興特別所得税を合わせて計算します。
計算結果が過去の年末調整と違ってくる可能性があり
ます。
●100円未満切り捨てのタイミングが違う
復興所得税分を上乗せした税額で、100円未満の切り
捨てします。
(6)よくある間違い~納税編~
●1月20日までに納税する
6ヶ月分の源泉所得税をまとめて納税する「納期の特
例」を適用している場合には、7月分から12月分の納期
限は、翌年1月20日になります。
毎月納付の場合の12月分の納期限は、翌年1月10日で
す。
●ゼロ申告をしていない
年末調整の結果、還付額が多額で源泉所得税の納税額
がゼロの場合は、納税額ゼロの納付書を作成して、税務
署に提出してください。
e-Taxで送信しても大丈夫です。