1人オーナー会社の増税
2006年2月6日
(1)制度の内容
役員報酬は、所得税法上、給与として扱われます。給与所得には、サラリーマンの経費に相当する部分として、給与所得控除というのがあります。この給与所得控除の金額を、法人税を計算する際に、利益に加算することになります。法人税は、利益に税率をかけて計算しますので、利益に加算するということは、その分、法人税の負担が増えることになります。
ちなみに、給与所得控除の金額は、年収1,200万で230万円、年収2,400万円で、290万円となります。
なお、この改正は、平成19年3月決算から始まる予定です。
(2)対象となる会社
次の2つの要件を満たす会社です。
・社長とその親族の持株割合が90%以上であること
・社長とその親族が、役員の過半数を占めること
改正案では、「業務を主宰する役員」という表現が使われています。これは、趣旨としては、社長のことを指しています。ただ、実質的なオーナー以外に、名義上の社長がいるような場合には、オーナーを指すことになります。
また、「常務に従事する役員」という表現から、役員の過半数を判定する際には、非常勤役員や名義上の役員は、除外して判定します。
役員が3名でも、社長と2名の非常勤役員という構成の場合は、常勤役員は、社長1人ですので、過半数を占めていることになります。
(3)除外規定
この規定には、除外規定が設けられています。上記(2)の2つの要件に該当しても、(1)の規程は、適用されませんので、法人税が増えるないことになります。除外規定の判定には、まず、次の所得等の金額を求めます。
所得等の金額=
(前期以前3期分の会社の利益+前期以前3期分の社長の役員報酬額)÷3
・所得等の金額が800万円以下の場合
利益と役員報酬を足した金額が、800万円以下であれば、この規程は適用されません。利益がゼロで、役員報酬が800万円以内であれば、これまでの税負担と、何ら変わらないことになります。
・所得等の金額が800万円超3,000万円以下の場合
この場合には、社長の役員報酬額が、所得等の金額の50%以下であれば、適用除外となります。
(4)対策
・社長一族の持株割合を90%未満にする
親族以外の第三者に10%超の株式を保有してもらえば、この規程は、適用されなくなります。信頼のおける取引先で、同じように、この規程に苦しめられそうなところがあれば、お互いに、11%ずつ株を持ち合えば、この規程の対象外になります。
取引先以外では、従業員などに出資してもらうのも大丈夫です。
ただ、後から仲が悪くなったり、退職したりすると、株を保有していることが問題になることもありますので、慎重に実行する必要があります。
・役員を増やす
社長一族が役員の過半数を占めてはいけませんので、親族以外の役員を増やせばいいことになります。しかし、名義上や非常勤ではダメですので、常勤できる人物を役員にしなくてはいけません。
従業員で信頼の置ける者がいれば、役員への昇格を持ちかけてみてはいかがでしょうか。肩書きによって、仕事にやりがいを持つことにより、業績もアップするかもしれません。名義上ではダメですから、役員として、経営参加させることを忘れないでくださいね。
また、取締役会の過半数を反社長派に握られた場合には、社長解任というようなクーデターを起こされる可能性もありますので、こちらも慎重に実行してください。
・社長以外の役員報酬比率をアップする
社長以外の役員になっている奥さんや子どもの役員報酬を上げれば、適用除外になる可能性が高くなります。社長個人の収入は減ってしまうかもしれませんが、社長一家として、結果的に収入が減らないことを目的とします。
これも、勤務実態とかけ離れた役員報酬を支給した場合には、この規程以前に、経費として認められない可能性が出てきます。
現段階では、まだ、改正案の状況ですので、このまま法案が通るかという問題もありますし、詳細についても決まっていない部分もありますので、今後の推移を注意深く見守ってください。
(M.H)