それ、控除できません!|仙台市の税理士・ひなた税理士法人
2025年9月18日更新
2005年2月7日
(1)受け取った保険金
医療費控除を申告する前に、まず確認すべきなのが「医療費を補てんする目的で受け取ったお金があるかどうか」です。
これを見落とすと、控除額を多く申告してしまい、後から修正が必要になることもあります。
たとえば、健康保険から支給される「高額療養費」や「出産育児一時金」、生命保険や共済からの「入院給付金」「医療保険金」、交通事故の「損害賠償金」などは、すべて医療費の補てんとみなされます。
これらは、実際に支払った医療費から差し引いて計算しなければなりません。
会社の互助会や親睦会から支給された「入院給付金」も、医療費の補てん目的であれば控除の対象外です。
ただし、入院したことへのお見舞いとして渡された「入院見舞金」は、儀礼的な性質のため差し引く必要はありません。
一方、「出産手当金」は、産前産後に会社を休んだことによる給与の代わりとして支給されるもので、医療費の補てんではありません。
そのため、医療費控除の計算から差し引く必要はありません。
交通事故で慰謝料を受け取った場合も、医療費の補てんとして支払われた部分は差し引きますが、慰謝料そのものは精神的損害への補償であり、税金はかからず、申告も不要です。
保険金の支給がまだ確定していない場合、たとえば12月に入院して保険会社に請求したが、申告時点で支給されていない場合は、概算額で申告を行うことが認められています。
後日、給付額が確定した際に、申告時の概算額よりも少なかった場合は、希望すれば更正の請求を行って控除額を増やすことができます。
逆に、確定額が概算より多かった場合は、控除額が過大となるため、修正申告を行う必要があります。
なお、医療費控除を含む還付申告は、対象となる年の翌年1月1日から5年間提出することができます。
通常の確定申告期限は3月15日ですが、還付申告にはこの期限は適用されません。
(2)医療費控除
こうした「受け取ったお金」の整理が済んだら、いよいよ医療費控除の計算に進みます。
医療費控除とは、1月1日から12月31日までの1年間に支払った医療費のうち、一定額を所得税の計算から差し引くことで、税金を軽くできる制度です。控除を受けるには、確定申告が必要です。
控除額は、「支払った医療費」から「保険金などの補てん額」を引き、さらに10万円(所得が200万円未満の人は所得の5%)を差し引いた残りの金額です。
対象となる医療費には、病院や薬局での治療費、妊娠中の定期検診や入院費、電車・バス・タクシーなどの通院費が含まれます。
交通費は領収書がなくても、家計簿やメモで記録しておけば申告できます。
ただし、医師への謝礼、異常がなかった健康診断の費用、健康食品やビタミン剤、美容目的の整形、自家用車のガソリン代などは控除の対象外です。
歯科治療も、保険がきかない自由診療であっても、一般的な治療であれば控除できます。
ただし、見た目を良くするための治療や、必要以上に高価な材料を使った場合は対象外です。
歯科ローンを使って治療費を支払った場合、金利や手数料は控除できませんが、実際の治療費部分は控除の対象になります。
領収書がない場合は、契約書や支払明細などを準備しておくと安心です。
介護サービスも、医療に関係する内容であれば控除の対象になることがあります。
治療が年をまたいだ場合は、それぞれの年ごとに支払った医療費を分けて計算します。
たとえば、12月に9万円、翌年1月に8万円支払った場合、どちらの年も10万円を超えていないため、控除が受けられない可能性があります。
(3)医療費のお知らせと領収書
医療費控除の申告では、医療費控除の明細書を確定申告書に添付することで、領収書の提出や提示は不要になります。
ただし、領収書そのものは申告後も重要な書類です。
税務署から問い合わせがあった場合に備えて、申告期限から5年間は保管しておく義務があります。
健康保険組合などから送られてくる医療費のお知らせは、記載内容が一定の条件を満たしていれば、医療費控除の明細書を作成する際の根拠資料として使うことができます。
具体的には、被保険者の氏名、療養を受けた年月、療養を受けた人の氏名、病院や薬局の名称、実際に支払った医療費の額、保険者の名称の6項目がすべて記載されている必要があります。
この6項目が揃っている場合は、通知に記載された医療費について領収書の保管は不要になります。
ただし、医療費控除の明細書そのものは必ず提出しなければなりません。
また、通知に載っていない医療費や、助成制度によって自己負担がなかった医療費などについては、従来どおり領収書の保管が必要です。
通知に記載されている金額が実際の支払額と異なる場合もあるため、申告前に内容をよく確認し、必要に応じて領収書と照らし合わせることが大切です。
(M.H)
※内容につきましては、記載日現在の法令に基づき、一般的な条件設定のもとに、説明を簡略しております。実際の申告の際は、必ず、税理士又は税務署にご相談ください。
