売上代金が回収不能になった場合の処理(貸倒損失)
2005年1月7日
月末に入金予定だった売掛金が、相手先の倒産などにより、回収できないことがあります。回収不能のことを「貸倒」といいますが、この回収できなかった金額を、貸倒損失として経費にするためには、税法上の様々な基準をクリアしなければなりません。
基準をクリアしないまま経費処理をすると、寄附金という扱いになり、資本金や利益金額に応じて、経費算入できない金額が出てきます。貸倒処理には、十分な検討が必要ですので、事前に必ず相談してくださいね。
(1)債権の全部又は一部が切捨てられた場合
次に掲げるように、法的整理等によって、債権の切捨てが確定した場合には、その切捨てられた債権の金額を、強制的に損失に計上しなければなりません。
・会社更生法等による更生計画の認可の決定があった場合
・民事再生法による再生計画の認可の決定があった場合
・商法による特別清算の認可、若しくは、整理計画の決定があった場合
・破産法による強制和議の認可の決定があった場合
・債権者集会で、合理的な基準により協議決定があった場合
・第三者の斡旋による協議で、合理的な基準により債権切捨の契約があった場合
・長期間債務超過の会社に対して、書面により、債務免除の通知をした場合
最初4つは、裁判所に申し立てをして手続を行うことになりますが、申し立てをした段階では、貸倒引当金の計上という形で、債権の50%程度を、経費に計上することができます。最終的な債務整理の決定がおりるまで、何年もかかる場合がありますので、債務整理が現在どのような状況なのか、チェックをしていく必要があります。
最後の書面による債務免除(債権放棄)は、一般的には、内容証明郵便を利用し、証拠を残すようにします。また、一方的に債権放棄を通知しても、債務者に返済能力がある場合には、寄附金として取り扱われ、経費算入に制限が出てきます。
(2)全額回収不能見込の場合
相手の資産状況や支払能力等から見て、債権全額の回収ができないことがわかったときは、その時点で、全額を貸倒として経費に計上することができます。
(1)の法的整理等の場合には、強制的に経費に算入されますが、(2)の場合には、自主的に経費に算入するという意思表示をしなければなりません。回収不能が判明した時点でしか、経費算入ができないという規定になっていますので、経費算入の意思表示をしなかった場合には、法的整理等が行われるまで、経費算入ができない場合も出てきます。
また、全額回収不能が条件ですから、一部でも回収の見込がある段階でこの規定を適用しても、貸倒とは認められず、寄附金の扱いになることがあります。
担保を取っているときは、担保分の回収可能性がありますので、担保を処分した後の残りの債権を、経費処理することになります。
(3)1年以上取引がない場合等
得意先との取引がなくなってから、1年以上経過した場合には、次の金額を貸倒として経費に計上することができます。
貸倒金額=債権金額-1円(備忘価額)
なお、債権は、売掛金や未収請負金等の売掛債権だけが、この規定の対象であり、貸付金や未収利息等は含まれません。また、取引停止をいつと見るかですが、得意先と直接の接触をせずに、振込で入金があった場合には、その入金日となります。取引停止には、継続的に取引を行っていることが前提になりますので、たまたま、一度だけの取引が回収不能になった場合には、対象になりません。
そうそう、担保がある場合には、この規定は使えませんので、注意してください。
さらに、同一地域の売掛債権の合計額が、旅費等の回収費用を下回り、督促をしても回収不能の場合には、上記と同じように、債権金額から1円を引いた金額を、貸倒として経費に計上することができます。
この規定も、担保がある場合には、使えませんよ。
(5)貸倒処理した債権が回収できた場合
既に回収不能として処理した債権が、ひょんなことから回収できたとします。こんなときは、あきらめていたものが回収できたということで、なんか、儲かった気がしますよね。
経理上も、「気」だけじゃなく、本当の儲けとして、収入に加算しなければいけません。収入に計上する金額は、既に貸倒として経費処理した金額ではなく、実際に、回収した金額になります。このようなときの勘定科目を「償却済債権取立益」と言います。
(6)ゴルフ会員権の預託金
民事再生法により、ゴルフ会員権の預託金の切捨があった場合には、その切捨てられた金額は、会社の貸倒として経費に計上されます。
会社所有の場合には、経費に計上できますが、個人所有の会員権の切捨があった場合には、個人の所得税からは、何も控除されないことになります。含み損の出ている会員権は、ゴルフ場が破綻する前に、売買により譲渡損失として確定しておくことが必要です。
(M.H)