2023年11月20日
(1)相続時精算課税の改正
親から子へ、祖父母から孫へというように、直系尊属間で生前贈与を行った場合は、贈与税の対象です。
贈与税の申告の際に、相続時精算課税制度を適用すると、贈与税の無税枠が大幅に拡大されます。
いわゆる暦年贈与と言われる通常の生前贈与の場合は、1年間の無税枠は110万円です。
相続時精算課税制度ですと、一生の間に累積で無税枠が2,500万円になります。
2,500万円を超えた場合は、20%の税率で贈与税がかかります。
2024年1月からは、2,500万円にプラスして、毎年基礎控除110万円の非課税枠が創設されます。
つまり、一度に2,610万円の生前贈与をしても、相続時精算課税制度であれば、贈与税はゼロになります。
毎年610万円ずつ贈与していけば、最初の5年間は生涯の2,500万円の無税枠と毎年の110万円の基礎控除を使って、無税となります。
6年目は生涯の無税枠を使い切っていますので、110万円を超える500万円に対して、20%、100万円の贈与税がかかります。
この制度は、相続時に精算を行いますから、相続税の計算をする際に、生前贈与をした財産を、贈与時の時価で遺産に加算します。
20%の贈与税を払っていれば、その贈与税は相続税の前払いとして、差し引いて納税します。
(2)相続時精算課税制度で110万円の贈与
毎年110万円ずつ生前贈与をした場合、暦年課税でも相続時精算課税でも、贈与税はゼロです。
ただし、精算課税の場合は、最初だけ制度を適用する旨の申告が必要です。
精算課税の場合は、110万円の基礎控除の範囲内であれば、相続税の申告の際に生前贈与した財産を遺産に加算されることはありません。
永久に無税で生前贈与が可能になります。
ただし、精算課税制度は一度適用すると、暦年課税には戻れませんので、よく検討してから進めてくださいね。
なお、暦年課税の場合は、亡くなる前7年間に生前贈与した財産が、相続税の計算の際に遺産に加算される可能性がありますので、こちらもご注意を。
(3)無税でも申告が必要かも
精算課税は、1年間に基礎控除の110万円以内の贈与であれば、最初の年を除いて、申告不要です。
ただし、110万円を超えて贈与した場合は、必ず申告をしてください。
2,500万円の非課税枠の範囲内で、どうせ贈与税がゼロなんでと考えて申告をしないと、追徴課税されることになります。
2,500万円の非課税枠を使う場合は、精算課税を適用する意思を申告で示さないと適用されません。
あくまでも申告しなくて良いのは、110万円以下の時です。
(4)財産評価の誤り
精算課税の申告の際に、財産評価をまちがえて、低額で申告したとしてもあわてないでください。
正しい金額で修正申告をすれば、2,500万円の非課税枠は適用できます。
修正申告の結果、累積2,500万円以内であれば、追徴課税の心配もありません。
(M.H)
※内容につきましては、記載日現在の法令に基づき、一般的な条件設定のもとに、説明を簡略しております。実際の申告の際は、必ず、税理士又は税務署にご相談ください。