2023年10月20日
(1)インボイスがなくても税額控除
登録番号等の必要事項が記載されたインボイスを保存していると、消費税の納税額を計算する際、納税額から控除することができます。
インボイスを保存していない場合は、控除ができないこととなり、消費税相当額の負担が増えることになります。
ところが、どうしてもインボイスの保管が難しい取引があります。
一定の条件を満たせば、帳簿への記載のみで税額を控除できる取引を紹介します。
(2)公共交通機関
鉄道、バスや船舶の公共交通機関は、インボイスの保存が不要です。
ただし、1回の支払額が3万円未満の場合です。
片道1人分の料金が3万円未満でも、全員分をまとめて購入して3万円以上となった場合は、インボイスが必要です。
1人分でも往復で購入して3万円以上となっても、インボイスが必要です。
帳簿には、「3万円未満鉄道料金」や「公共交通機関特例」と付記してください。
「※」や「◎」を3万円未満の公共交通機関とするルールを定める方法でも大丈夫です。
なお、公共交通機関には飛行機は含まれません。
航空券の場合は、搭乗後に航空会社のサイト等からインボイスの発行を受ける必要があります。
搭乗前の予約の段階ではないのでご注意を。
(3)入場券
利用時に回収される入場券に、インボイスの事項が記載されている場合には、インボイスの保存は不要です。
帳簿には、「入場券等」と付記してください。
(4)古物商の中古品の購入
古物商が中古品を買い取った場合は、インボイスの保存が不要です。
古物商を営む場合は、警察から許可をもらう必要があります。
古物営業法では、1万円以上の買い取りの場合には、古物台帳に記載して保存しなければなりません。
古物台帳は税法上7年間の保存が必要です。
さらに、帳簿には古物の買い取りである旨を付記しておきましょう。
(5)質屋の質物の取得
質屋の場合も、インボイスの保存は不要です。
質屋営業法に定める帳簿を保存してください。
(6)不動産屋の個人や免税事業者からの買い取り
不動産屋が一般消費者から住宅を買い取った場合は、インボイスの要件を満たす領収証等は発行されません。
それでも、保存義務がないことから、消費税の税額控除ができます。
売り主が事業主ではない個人や会社でも免税事業者の場合は、インボイスの保存は不要です。
もちろん宅建業法に定める帳簿は保存しておいてくださいね。
(7)自販機
自動販売機で購入した場合は、領収証等が発行されませんから、3万円未満であれば、インボイスの保存は不要です。
実際にあるかわかりませんが、3万円以上であれば、インボイスが必要ということになります。
帳簿には「○○市」というように、自動販売機の所在地を付記してください。
自販機特例には、ATMでの振込手数料やコインロッカー、コインランドリーが含まれます。
ただし、コンビニやスーパーのセルフレジやコインパーキングは保存義務があります。
(8)出張旅費や通勤手当
出張旅費を従業員等に支給する場合には、インボイスの保存は不要です。
実際にかかった費用がいくらかにかかわらず、旅費規程により一定額を支給している場合には、誰が出張に行ったのか記録を残してください。
実費精算をしている場合でも、領収証等の保存が不要になります。
旅費精算書や出張報告書により、内容がわかるようにしておきましょう。
飛行機代や3万円以上の新幹線代等を、旅費精算書の方式で支給している場合には、インボイスの保存が不要となります。
なお、社長の出張を法人のクレジットカードで支払っている場合には、インボイスの保存が必要になる場合があります。
通勤手当は、給与明細に記載されますから、賃金台帳の保存で問題ありません。
(M.H)
※内容につきましては、記載日現在の法令に基づき、一般的な条件設定のもとに、説明を簡略しております。実際の申告の際は、必ず、税理士又は税務署にご相談ください。