2022年11月4日

 年末調整を行うために、従業員は会社に対して次の3

つの用紙を提出します。

 

●給与所得者の扶養控除等(異動)申告書

●給与所得者の基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼

所得金額調整控除申告書

●給与所得者の保険料控除申告書

 

 提出書類への押印は不要です。

 

 また、2年目以降の住宅ローン控除を受ける人は、税

務署から送られてきた住宅借入金等特別控除申告書と金

融機関の借入金残高証明書も会社に提出します。

 

 会社によっては年調ソフトによる電子データでの提出

が可能です。

 

 年末調整担当者は、国税庁のサイトからエクセル版の

「年末調整計算シート」で計算することができます。

 

 

(1)年末調整とは

 

 会社は、毎月の給料や賞与を支払う際に、従業員の扶

養家族の人数等に応じて、所得税を概算額で給料等から

天引きすることとなっています。

 

 毎月天引きしている金額は概算額ですから、12月の給

料支給時に1年分の所得税額を計算し直し、計算した所

得税額と毎月の概算額との差額を精算します。

 

 この精算手続きのことを「年末調整」といいます。

 

 

(2)よくある間違い~扶養控除等申告書編~

 

●令和5年分扶養控除等申告書を使っている

 

 令和5年分の扶養控除等申告書を使って、令和4年分

の年末調整をしている方は、注意してください。

 

 控除対象扶養親族は、16歳以上を記載しますが、令和

5年分の申告書には、「平20.1.1以前生」と記載されて

います

 

 令和4年分の年末調整で扶養親族になるのは、「平19.

1.1以前生」の16歳以上になります。

 

 15歳以下の扶養親族は、用紙下部の「住民税に関する

事項」に記入します。

 

 生年月日がきちんと記載してあれば、年末調整担当者

が判断できます。

 

 

●マイナンバーが記載されていない

 

 扶養控除等申告書を記入する場合には、マイナンバー

(個人番号)の記載が必要になります。

 

 本人だけでなく、扶養親族のマイナンバーも必要です。

 

 ただし、前年以前にマイナンバーを記載し、会社が一

覧表やデータで管理している場合は、記載不要です。

 

 

●会社のマイナンバーが記載されていない

 

 給与を支払う会社のマイナンバー(法人番号)を記載

してください。

 

 なお、個人事業の場合は、マイナンバー(個人番号)

を記載してはいけません。

 

 

●年収が1,095万円以下なのに源泉控除対象配偶者の記

載がない

 

 本人の年収が1,095万円(所得900万円)以下、かつ、

配偶者の年収が150万円(所得95万円)以下を、源泉控

除対象配偶者といいます。

 

 夫婦の年収が基準以下の場合は、配偶者の氏名を記載

します。

 

 

●扶養親族の所得金額欄に年収を記載している

 

 所得と年収は違います。扶養親族になれのは所得が48

万円以下の人です。

 

 所得とは、収入から経費を引いた金額をいいます。

 

 パートやアルバイトの場合、経費に相当する金額とし

て、最低55万円が与えられています。

 

 パート収入が年間103万円の場合、所得は、103万円-

55万円=48万円となり、所得が48万円以下ですから、扶

養親族に該当することとなります。金額欄には「48万

円」と記載します。

 

 パート収入が103万までなら扶養になれる103万円の壁

はここから来ています。

 

 パート収入は気にされている方が多いのですが、大学

生の子供がいる場合には、子供のアルバイト収入にも注

意してください。

 

 稼ぎすぎていると、扶養親族に該当しなくなり、後で

追徴課税されることがよくあります。

 

 また、年金の場合の、経費に相当する金額は、65歳以

上で最低110万円、65歳未満で最低60万円とですので、

年金額が158万円(65歳以上)又は108万円(65歳未満)

の場合に、扶養親族に該当します。

 

 

●「同居老親等」に○が付いていない

 

 70歳以上の父母や祖父母を扶養している場合には、扶

養控除の金額が増加します。

 

 さらに、同居しているかどうかでも金額が変わってき

ます。

 

 同居しているのに、ここに印が付いていないと控除額

で損をすることとなります。

 

 老人ホームなどに入居されている場合には、同居では

ありませんので、こちらは○を付けてはいけません。

 

 一時的に入院している場合は同居です。

 

 

●「特定扶養親族」に○が付いていない

 

 19歳以上22歳以下の方を扶養している場合には、扶養

控除の金額が増加します。該当する場合には、○を付け

てください。

 

 生年月日がきちんと書かれていれば判断はできますが、

たまに、生年月日も書かれていないときがあります。

 

 

●障害の内容が書かれていない

 

 本人や配偶者が障害者であったり、障害者を扶養して

いたりする場合には、控除額が増加します。障害者であ

る旨を記載する欄がありますので、そちらもきちんと記

入してください。

 

 また、障害の程度により、控除額も変わってきます。

障害者手帳等に書かれている等級も記載するようにして

ください。

 

 15歳以下の子供は、扶養控除の対象にはなりませんが、

障害者控除の対象になりますので、忘れずに記載してく

ださい。

 

 

●ひとり親や寡婦を記載していない

 

 配偶者がいない場合には、控除額が増加することがあ

ります。

 

 所得が48万円以下である子供と、一緒に生活している

ことが条件です。

 

 自分の所得が500万円以下でなければいけません。

 

 収入が給与のみであれば、給与収入約677万円以下が

対象です。

 

 入籍していなくても、住民票に未届の夫又は未届の妻

の記載がある場合は、対象になりません。

 

 該当する場合は「ひとり親」欄にチェックマークを付

けてください。

 

 夫と死別して、その後結婚していない場合は、所得が

500万円以下であれば、寡婦控除が受けられます。

 

 夫と離婚後結婚していなくて、扶養親族がいて、かつ、

所得が500万円以下であれば、寡婦控除が受けられます。

 

 該当する場合は「寡婦」欄にチェックマークを付けて

ください。

 

 

●外国の扶養親族の証明書類を提出していない

 

 海外に居住する親族の扶養控除、配偶者控除、障害者

控除を受ける場合は、「親族関係書類」と「送金関係書

類」も提出しなければいけません。

 

 親族関係書類とは、戸籍の附票、パスポートや外国政

府が発行した書類で親族関係がわかる書類です。

 

 送金関係書類とは、金融機関やクレジットカード会社

の書類で、生活費や教育費に充てたことを明らかにする

書類です。

 

 

(3)よくある間違い~基礎控除申告書編~

 

●年収2,695万円超なのに基礎控除申告書に記載してい

 

 年間所得2,500万円超の場合は、基礎控除申告書に金

額を記載しても、基礎控除は受けられません。

 

 給与収入の場合は、年収2,695万円以下の場合に記載

してください。

 

 なお、給与以外に収入がある場合は、他の所得も合算

して判断します。

 

 所得が1,000万円を超える場合は、配偶者控除等申告

書の記載は不要です。

 

 

●会社のマイナンバーが記載されていない

 

 給与を支払う会社のマイナンバー(法人番号)は必要

です。

 

 ただし、個人事業の場合は、マイナンバー(個人番

号)を記載してはいけません。

 

 

(4)よくある間違い~配偶者控除等申告書編~

 

 

●年収1,000万円超なのに配偶者控除等申告書に記載し

ている

 

 年収1,195万円(所得1,000万円)を超える場合には、

配偶者控除も配偶者特別控除も受けられません。

 

 また、配偶者の所得が133万円を超える場合も、控除

を受けられません。

 

 配偶者の収入が給与だけの場合は、年収2,015,999円

未満であれば、控除の対象です。

 

 

●配偶者控除等の対象なのに、「扶養控除等申告書」の

みで、「配偶者控除等申告書」を提出しない

 

 配偶者控除と配偶者特別控除がいくら適用されるかは、

本人と配偶者の両方の所得が基準になります。

 

 申告書提出時の見積額でかまいませんから、年収や所

得を記載するようにしましょう。

 

 後日所得が確定して控除額が変わった場合は、訂正が

可能です。

 

 翌年1月31日までであれば、勤務先で再年末調整をし

てもらいます。

 

 それ以降は、自分で確定申告をすれば、差額が精算さ

れます。

 

 なお、配偶者が海外に居住している場合は、扶養親族

同様、親族であることと送金の証明が必要です。

 

 

●年金を記載しない

 

 年金をもらっている場合には、雑所得になります。

 

 65歳以上の場合は、年金収入から110万円を引いた金

額が所得になります。

 

 65歳未満の場合は、年金収入から60万円を引いた金額

が所得になります。

 

 ただし、65歳未満で年金収入が130万円を超える場合

には、計算が必要になりますので、裏面を確認してくだ

さい。

 

 

●配偶者控除等の金額が間違っている

 

 配偶者控除及び配偶者特別控除は、配偶者の所得の他

に本人の所得も関係してきます。

 

 判定がわかりづらい場合は、年末調整担当者が判断で

きるように、配偶者と本人両方の所得又は収入だけは記

載してください。

 

 

(5)よくある間違い~所得金額調整控除申告書編~

 

●年収850万円超なのに所得金額調整控除申告書に記載

していない

 

 給与の年収が850万円超で23歳未満の扶養親族がいる

場合は、所得金額調整控除の対象です。

 

 15歳以下でも扶養親族がいれば対象です。

 

 また、本人、配偶者、扶養親族のいずれかが特別障害

者の場合にも、控除を受けられます。

 

 該当する欄にチェックマークを付けてください。

 

 合わせて、扶養親族や障害者手帳の内容も記載してく

ださい。

 

 

(6)よくある間違い~保険料控除申告書編~

 

●保険契約の内容を区分していない

 

 生命保険料控除は、生命保険の種類によって、「一

般」、「介護医療」、「個人年金」の3種類に分かれて

います。

 

 なお、「一般」、「介護医療」、「個人年金」の区別

は、証明書に、その保険がどれに該当するか記載されて

います。

 

 10、11月頃に生命保険会社から届いた控除証明書を確

認してください。

 

 証明書がマイナポータルから電子データで提供される

場合があります。

 

 「年金保険」という名称の保険でも、「一般」に該当

することもあります。

 

 「医療保険」という名称の保険でも、「一般」に該当

することもあります。

 

 こくみん共済等の共済保険の場合には、「介護」に該

当することもあります。

 

 平成24年1月1日以後の新たな保険契約の締結の有無や

契約の変更の有無によって、控除額の計算式が変わりま

す。

 

 

●自宅以外の地震保険料を控除している

 

 賃貸用や事業用の不動産の地震保険料は、いくら証明

書があっても控除の対象になりません。

 

 地震保険料控除は、居住用不動産が対象です。

 

 

●損害保険料控除もあります

 

 平成19年分より、損害保険料控除は廃止されました。

 

 ただし、平成18年12月31日までに契約した長期損害保

険契約については、19年以降も控除できます。地震保険

料控除欄の「旧長期」に、○を付けてください。

 

 「長期」になるのは、保険期間が10年以上で、かつ、

満期返戻金があるものです。

 

 期間が10年以上でも、満期返戻金が無いものもありま

すので、その場合は対象になりません。

 

 

●平成18年までに契約した地震保険の二重控除

 

 平成18年12月31日以前に契約した地震保険には、長期

損害保険料控除の対象になるものもあります。1つの保

険料の支払いで2つの控除は受けられませんので、どち

らか有利な方を選択します。

 

 農協の建更等の証明書は、1つの保険契約で両方の証

明金額が記載されていますので注意が必要です。

 

 

●自分で払った健康保険料等を記載していない

 

 年の途中で無職の期間があった場合には、健康保険料

や国民年金を自分で納付することになります。この自分

で払った保険料は、申告が無いと会社では一切把握でき

ません。

 

 用紙の右側に記載する欄がありますので、自分で払っ

た金額を記載してください。

 

 親が子供の国民年金を払ってあげた場合も、親の控除

対象になります。

 

 なお、国民年金は、控除証明書か領収証の添付が必要

です。健康保険は、領収証等の添付は必要ありません。

 

 給料から社会保険料が天引きされている人は、会社で

計算しますので記載する必要はありません。

 

 

●2年分前納の国民年金保険料の控除額を記載していな

 

 国民年金保険料を2年分前納した場合には、2年分全

額を控除するか、年分ごとに控除するか、選択できます。

 

 2年分全額控除の場合は、前納した金額を記載してく

ださい。

 

 年ごとに控除したい場合は、「社会保険料(国民年金

保険料)控除額内訳明細書」を添付する必要があります。

 

 

●自分で払った確定拠出年金(iDeCo)や小規模企業共

済を記載していない

 

 自分で払ったiDeCoや小規模企業共済の掛金は、申告

が無いと会社では一切把握できません。

 

 用紙の右下に記載する欄がありますので、自分で払っ

た金額を記載してください。

 

 

(5)よくある間違い~計算編~

 

 

●給与の締日で計算する

 

 例えば12月31日締め、翌年1月10日払いの給与は、令

和5年分の給与となります。

 

 給与の締日と支給日が月をまたぐ場合には、年末調整

は支給日で考えます。

 

 12月支給分までが、その年の年末調整の対象になりま

す。

 

 

●令和19年まで復興特別所得税を上乗せ

 

 通常の税率で計算した所得税に102.1%をかけて、所

得税と復興特別所得税を合わせて計算します。

 

 計算結果が過去の年末調整と違ってくる可能性があり

ます。

 

 

●100円未満切り捨てのタイミングが違う

 

 復興所得税分を上乗せした税額で、100円未満の切り

捨てします。

 

 

(6)よくある間違い~納税編~

 

●1月20日までに納税する

 

 6ヶ月分の源泉所得税をまとめて納税する「納期の特

例」を適用している場合には、7月分から12月分の納期

限は、翌年1月20日になります。

 

 毎月納付の場合の12月分の納期限は、翌年1月10日で

す。

 

 

●ゼロ申告をしていない

 

 年末調整の結果、還付額が多額で源泉所得税の納税額

がゼロの場合は、納税額ゼロの納付書を作成して、税務

署に提出してください。

 

 e-Taxで送信しても大丈夫です。

 

(M.H)

※内容につきましては、記載日現在の法令に基づき、一般的な条件設定のもとに、説明を簡略しております。実際の申告の際は、必ず、税理士又は税務署にご相談ください。

 
 

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