減価償却制度の見直し

2007.5.7

(1)これまでの減価償却制度

 まず、これまでの減価償却制度について簡単におさらいします。

 減価償却とは、時間の経過とともにその価値が減少していく建物や車等の購入金額について、購入時に全額経費計上せず、法律で定められた期間(耐用年数)で按分して経費計上する制度です。

 経費計上できるといっても、税法上では購入金額の5%は資産に残す必要があります。

 また、毎期の減価償却費の計算について、基本的に「定額法」と「定率法」のどちらかの計算方法を選択することになり、耐用年数に応じた償却率を使って算出します。

 計算方法は次のとおりです。

・定額法の計算方法
  減価償却費=取得価格×90%×定額法の償却率

・定率法の計算方法
  減価償却費=(取得価格-前期までの償却額累計)×定率法の償却率


(2)減価償却制度改正の内容

 今回の改正で大きなポイントは次の2つです。

・購入金額のほぼ全額償却可能に

→ 平成19年4月1日以降に購入した資産は、今まで購入金額の5%分は、減価 償却ができませんでしたが、改正後は、購入金額の全額を減価償却すること ができます(1円は資産があることを忘れない為に残しておきます)。

・平成19年3月31日以前に購入した資産の計算方法変更

→ 平成19年3月31日以前に購入した資産については、今までの計算方法で減価償却を行った後、購入金額の5%を別の計算方法で減価償却していきます。


(3)旧・新制度での減価償却費の比較

 平成19年4月1日以降に購入した資産については、新償却率を使って計算します。償却率は大きく変わりましたが、計算式は基本的に変わりありませんので、具体的な例をみながら変更点を確認してみましょう。


・400万円の新車を、年度1ヶ月目に購入した場合の減価償却費(定率法、耐用年数6年)

      旧定率法  新定率法    差額
 1年目:1,276,000円 1,668,000円→+392,000円
 2年目: 868,956円  972,444円→+103,488円
 3年目: 591,759円  566,934円→△ 24,825円
 4年目: 402,987円 330,523円→△ 72,464円
 5年目: 274,435円 231,049円→△ 43,386円
 6年目: 186,890円 231,049円→+ 44,159円


 1、2年目の償却額が新定率法で非常に大きくなることがわかると思います。

 今回の改正により、資産を購入した年度から最初の何年間かは、減価償却費がこれまでと比べて増加する傾向にあるということを覚えておきましょう。


(4)既取得済資産についての償却方法

 平成19年3月31日以前に購入した資産の減価償却については、次の2段階で行っていきます。

・これまでと同様の方法で、購入金額の5%まで減価償却。

・購入金額の5%から1円を除き、5で割ったものを減価償却費として、償却終了の翌期より均等償却。

※計算式:減価償却費=(購入金額の5%-1円)÷5

 つまり、購入金額の5%については、おおむね5年間で償却していくこととなります。

 なお、既に減価償却を終えている場合は、帳簿上の5%について平成20年3月期以降から均等償却していくことになります。


(5)減価償却方法変更の届出

 現行制度上では、減価償却方法を変更する際、変更したい年度開始の前日ま
でに届出が必要で、最低3年間は同じ償却方法を使う必要がありました。

 新制度になっても上記内容に変更はありませんが、改正に伴い、経過措置が設けられました。

 経過措置では、平成19年4月1日以後、最初に到来する決算申告書提出期限までに届出した場合、以前の変更時期に係わらず、その事業年度から変更後の償却方法を使うことができるとされています。

 つまり3月決算の場合、平成20年5月末までに届出すれば、平成20年3月期より、新償却方法を使用できます。


(6)赤字転落の可能性

 定額法を採用している場合は、改正後も影響額はそれほど大きくありません。

 定率法を採用している場合、(3)の例では旧定率法と比べ、初年度で39万円の減価償却費が増加することになりますので、減価償却資産をこれから購入するのであれば、赤字転落の可能性も踏まえて計画を立てる必要があります。

 また、定率法の場合、節税の為の使い方も考えられます。

 例えば、期の初めに中古車を購入すると、100%経費計上できる場合もあります。

 ただし、年の途中で購入した場合、減価償却費は月数按分することになっていますので、決算直前に節税対策として購入しても、翌年の減価償却費は大きく増加しますが、購入した年での節税効果はほとんどありません。

(H.S)

※内容につきましては、記載日現在の法令に基づき、一般的な条件設定のもとに、説明を簡略しております。実際の申告の際は、必ず、税理士又は税務署にご相談ください。

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