免税事業者の消費税の還付

2005年9月5日

(1)消費税の基本的な仕組み

 消費税の納税は、売上等でお客さんから預かった消費税から、仕入や経費等の支払に含まれる消費税を控除したあとの残りの消費税を、税務署へ納めることになっています。
 
 もし、仕入等の消費税のほうが、売上等の消費税よりも多かった場合は、どうなるでしょう。このように、払った消費税のほうが多い場合には、払いすぎた消費税分を、税務署が会社へ還付してくれることになります。


(2)納税義務の有無

 売上が1,000万円を超えた場合には、その2年(期)後の分から消費税を納めることになります。つまり、2年(期)前の売上が1,000万円を超えるかどうかによって、今年の消費税の納税義務があるかどうかを判断します。


(3)設立第1期と第2期の消費税

 会社を設立した第1期と第2期は、2期前の売上がありませんから、自動的に、消費税の納税義務は免除されます。第1期目の売上が、年換算で1,000万円を超えた場合には、第3期目から消費税を納めることになります。

 ただし、資本金が1,000万円以上の会社については、相当の売上規模があるとみなされ、第1期目から、消費税の納税義務が発生します。第1期目の売上が、年換算で1,000万円以下であれば、第3期目の消費税の納税義務は、免除されます。


(4)1・2期目の消費税の還付

 消費税の納税義務のない会社を「免税事業者」といいますが、免税事業者は、消費税の申告ができないことになっています。申告ができないということは、(1)で説明した、払いすぎた消費税の還付のための申告もできないんです。
 
 会社をはじめた当初は、事業に必要な設備を用意したり、販売のための仕入をしたりと、売上以上に支出がかさむことが、よくあります。こんな時に、払いすぎた消費税を取り戻す方法があります。
 
 設立第1期目の決算日までに、「消費税課税事業者選択届出書」を税務署に提出することにより、免税事業者であった第1期が、強制的に、課税事業者へと変わることになります。課税事業者というと、納税のイメージが伴いますが、意味合いとしては、消費税の申告を必ずしなければいけない事業者ということになりますので、納税の申告も還付の申告もできることになります。
 
 ただ、この課税事業者選択届出書を提出すると、2年間の強制適用となりますので、1年目で消費税の還付を受けても、2年目は納税という可能性が高くなります。目先の還付金にとらわれて、届出書を提出してしまうと、結果的に、税負担が多くなる可能性がありますので、事業計画をきちんと分析して、届出書を提出するかどうか、検討する必要があるでしょう。
 
 また、課税事業者選択届出書は、1度提出すると、永久に効力が発生しますので、途中で、強制的に課税事業者になることをやめたいと思ったときは、「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出する必要があります。この届出書を提出すれば、翌期からは、本来の2期前の売上が、1,000万円以下かどうかで、その期の納税義務を判定することになります。


 
(M.H)


※内容につきましては、記載日現在の法令に基づき、一般的な条件設定のもとに、説明を簡略しております。実際の申告の際は、必ず、税理士又は税務署にご相談ください。
 

収入印紙の豆知識

2005年8月5日

(1)収入印紙と印紙税

 印紙には、よく目にする収入印紙、法務局などで使用する登記印紙、特許申請に使用する特許印紙など様々ありますが、ここでは収入印紙について解説したいと思います。

 よく3万円以上の買い物をすると、200円の収入印紙が貼られた領収書を受け取りますよね。収入印紙は主に、印紙税の納付の為に使用します。印紙税は、契約書や領収書など、取引に際して作成される文書にかかる税金です。何気ない日常取引の中にも、印紙税という税金が関わってきます。


(2)課税文書と税額

 印紙税がかかるのは、税法で定められている課税文書に限られています。代表的なものをあげると次のとおりです。

・売上代金に係る金銭の受取書
 主に商品を売ったときの領収書、アパート家賃の領収書、工事代金の領収書 など。
・不動産、船舶又は航空機等の譲渡に関する契約書
 不動産売買契約書、不動産売渡証書など。
・消費貸借に関する契約書
 借入証書など。
・請負に関する契約書
 工事請負契約書、工事注文請書、広告契約書など。

 課税文書になるかどうかは、その文書の名称だけで判断するのではなく、実際の記載内容により判断するので、請求書がメインで領収書がくっついている書類でも、印紙が必要な場合があります。

 肝心な税額は、文書の種類と該当する記載金額によって違ってきます。最もよく使われる、売上代金に係る金銭の受領書については、広く知られているとおり、3万円未満が非課税です。3万円以上100万円未満の受領書は200円の印紙が必要になります。

 その他の課税文書に対する税額は、国税庁HPにある税額表でご確認下さい。


(3)印紙税納付を怠った場合

 印紙を貼るべき文書に貼っていなかったり、金額が不足していることが、調査で発覚した場合は、本来の税額+その2倍に相当する金額を過怠税として納めなければいけません。つまり本来の3倍の税金を払うことになります。ただし、調査を受ける前に未納や不足に気がつき、自主申告した場合は、本来の印紙税額+その10%(つまり本来の1.1倍)の金額の過怠税で済みます。なお、過怠税は法人税の延滞税と同じく、全額経費になりません。


(4)印紙税の還付

 決められた金額以上の印紙を貼ったり、貼る必要のない文書に印紙を貼ってしまった場合は、手続きにより国からお金を返してもらえます。そのためには、税務署にある「印紙税過誤納確認申請書」を記載して税務署に提出します。書類を提出する際は、間違って印紙を貼ってしまった書類と印鑑(法人の場合は代表者印)、還付金は銀行や郵便局の通帳に振込まれるので、口座番号が必要です。


(5)相殺の領収書

 会社間の取引の関係上、売掛金と買掛金を相殺することがあります。その際に発行する相殺の領収書には、印紙を貼る必要はありません。なぜなら、領収書といえども相殺は金銭の受取書に該当しないからです。ただし注意が必要です。領収書に「売掛金と買掛金を相殺」などの、相殺したことが分かるように記載しなければいけません。

 印紙税の節約の仕方について解説しておりますので、こちらもご覧下さい。





(Y.C)



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パソコンの経理処理

2005年8月5日

 パソコンの法定耐用年数は、なんと、4年です。それ以上前のパソコンを使っている方もいるでしょうし、中には、4年前のパソコンなんて使い物にならないと感じている方もいるでしょう。でも、残念ながら、法律でそう決まっていますので、税金の申告では、それに従うことになります。
 
 
(1)購入時の処理

 パソコンを購入したら、購入時に、「工具器具備品」(又は、「器具備品」、「備品」でも可。)という資産に計上します。
 
 でも、最近は、低価格のパソコンも販売されており、モニタ付きで79,800円というのもったりします。このように、購入代金が10万円未満の場合には、資産に計上しないで、「消耗品費」などの、経費にすることができます。
 
 10万円未満かどうかの判定は、1セットごとに行います。パソコン本体とディスプレイを別々に購入しても、単体では、使い物になりませんので、合計額で判定することになります。なお、ディスプレイのみの買い替えの場合には、単体で判定します。
 
 
(2)減価償却

 パソコンを購入したら、決算期ごとに減価償却をして、経費を計上していきます。減価償却の計算式は、下記のとおりです(定率法)。
 
 減価償却費=(購入代金-減価償却費の累計額)×償却率
 
 償却率は、耐用年数ごとに決まっており、4年の場合には、0.438になります。購入初年度だけは、購入月から決算月までの、月数按分が必要となりますので、計算式は、下記のとおりとなります。
 
 減価償却費=購入代金×償却率×購入月から決算月までの月数÷12ヶ月

 なお、パソコンでも、サーバー用に使用する場合には、耐用年数が5年(償却率0.319)となりますので、注意が必要です。


(3)設立第1期の減価償却

 設立第1期や決算期を変更した場合には、事業年度が、1年に満たない場合があります。1年に満たない場合には、耐用年数の改訂を行う必要があります。
 
 改訂耐用年数=法定耐用年数×12÷その事業年度の月数
 
 ・計算結果に1年未満の端数が出たときは、切捨。
  (例 4年×12÷5ヶ月=9.6年→9年)
 ・事業年度の月数は、1ヶ月未満の端数を切り上げて計算。
  (例 H17.8.5~H17.12.31は、4ヶ月と27日→5ヶ月)


(4)中小企業の特例

 資本金1億円以下の中小企業は、購入代金が30万円未満であれば、購入初年度に、購入代金の全額を経費に計上できます。
 
 この特例を適用するためには、税金の申告をする際に、申告書に添付する減価償却の明細書の備考欄に、次のように記載する必要があります。
 
 「取得価額 30万円未満の減価償却資産について措法67の8を適用している。また、適用した減価償却資産の取得価額の合計額は○○円であり、その明細は別途保管している。」
 
 文章の最後に、明細を別途保管の旨の記載があるとおり、全額経費に計上した資産については、別管理が必要になります。全額経費に計上しますから、決算書には、資産としてなにも載らないことになりますが、別の台帳で、パソコンの有無をきちんと把握するようにしてください。

 
(M.H)


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リース取引の種類

2005年6月6日

(1)リース取引とは

 リース取引とは、物件の所有者からリース期間中に、その物件を借りて使用する代わりに、リース料を支払う取引です。かたくるしく書きましたが、「リース」という言葉は日常一般的に使われているので、だいたいの内容は知っていますよね。

 会社が結ぶリース取引は基本的に、契約期間の途中で契約を解除することができません。物件を使用することによってかかるコスト(設置料や保険料など)を、借りた側が負担するので、実際には自分のものとして使用するのと、ほとんど変わりません(一部例外あり。)。

 実は、リース取引は契約内容により、会計処理の方法が違ってきます。どのような契約を結べば、会社にとって有利なのか、検討することが大事です。


(2)リース料が経費になる取引

 通常の賃貸借取引のリースです。この場合はリース料を支払ったときに費用計上されます。リース期間が終了すると、返品することになりますが、契約更新することによって、再び使用することができます。

 このリース取引は税金対策にも効果があります。

 例えば、3月決算で多額の利益が出そうだったから、3月に新車を一括で買った。という場合は、車が資産計上されてしまい、1ヶ月分の減価償却分しか経費になりません。現金が減って利益が減らないという、考えと違う結果になってしまいます。

 ですが、支払いと同時に経費になるリース取引の場合は違います。たとえ、3月にリース契約をして、3月31日に1年分のリース料を前払した場合でも、短期前払費用となり、支払った1年分のリース料が経費になります。すると利益が少なくなり、支払う税金も抑えられることになりますね。


(3)リースなのに会社の資産に

 リース期間終了後に、無償でリース物件をもらえたり、リース期間が耐用年数に比べ極端に短い、などの一定の要件を満たしている場合は、リースといえども貸借対照表に資産として計上されます。
 
 この場合は、減価償却によって経費になるので、支払った金額と経費になる金額が一致しません。つまり、ローンを組んで物件を購入した場合とあまり変わらないことになります。


(4)リース取引のメリット

 リース取引にする大きなメリットは、購入する場合と違い、一度に多額の設備資金を用意する必用がないことです。資金上の問題で諦めていた設備投資も、これで有効に行うことができます。また、賃貸借取引になりますので、金融機関からの借入枠も使わずに済みます。
 
 その他に、契約内容によって法人税がお得になったり、通常よりも多額の減価償却できたりと、税金対策にも効果がある場合がありますので、リースを検討される際は当事務所にご相談下さい。

 

(Y.C)

 


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設備投資は、決算対策になるか?

2005年6月6日

 決算で大幅な利益が出そうなので、何か物を買って、少しでも税金を減らそう。昔から、節税策として考えられてきました。さて、どれほど、効果があるのか、検討してみましょう。

(1)減価償却

 3月決算の会社が、3月25日に、500万円のトラックを購入したとします。耐用年数を5年とすると、その年の減価償却費(定率法)は、次のようになります。
 
 5,000,000円×0.369×1月/12月=153,750円
 
 計算式中の「1月/12月」の部分は、月割り計算を意味しています。期の途中
で、減価償却対象となる資産を購入した場合には、初年度だけ、月割り計算で
減価償却費の計算をすることになります。税率を40%とすると、節税額は、次
のとおりです。
 
 153,750円×40%=61,500円

 そうなりますと、500万円の出費をしたにもかかわらず、浮いた税金は、61,500円ということになります。今期の税金を少しでも少なくしたいという目的には、全然合ってないですね。

 それでも、2年目以降は、現金の出金がなくとも、減価償却費という形で、購入費の500万円が徐々に経費に計上されますので、減価償却が行われる5年間という期間で見ると、最終的には、出金分のほぼ全額が経費に計上されることになります。

 もし、トラックを購入しなければ、500万円に対する税金は、200万円かかることになります。それでも、会社に300万円が残るわけですから、今後の運転資金として、有効に活用することができるのではないでしょうか。

 税金の計算では、出金=経費ではありませんので、節税だけに気を取られずに、今後の資金繰りや経営戦略を考えて、設備投資をする必要があります。


(2)特別償却

 購入したトラックが、天然ガス車の場合には、上記(1)の減価償却費に、特別に償却費を上乗せして計算できる、「特別償却」を適用できる場合があります。
 
 上乗せ計算が適用できるのは、一定の要件に該当したときで、主なものとしては、次ような制度があります。
 
 ・エネルギー需給構造改革推進設備等の取得
 ・中小企業者等の機械等の取得
 ・事業基盤強化設備の取得
 ・情報通信機器等の取得             他
 
 上乗せできる金額は、制度によって様々ですが、目安としては、購入金額の30%~50%となっています。
 
 この制度は、2期目以降の減価償却費の先取りの制度なので、トータルでの減価償却費には、影響がありません。ただ、初年度に限っては、購入代金の約12%~20%の節税が行えることになります。


(3)特別税額控除

 (2)の制度に代えて、法人税を直接減額する制度もあります。
 
 特別償却は、初年度の償却費を多く計上できるので、初年度の税金は少なくなりますが、2年目以降の減価償却費が、通常よりも減少してしまうため、逆に2年目以降の納税額が多くなってしまいます。

 税額控除制度は、減価償却費には、何の影響も与えませんので、単純に購入年度の法人税が少なくなることになります。金額は、制度によって、おおむね購入金額の7%~10%となっています。
 
 設備投資の時期、制度の選択により、納税額に大きく影響が出る場合がありますので、充分に検討する必要があります。


 

(M.H)

 


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平成17年度税制改正

2005年5月9日

 平成17年度税制改正の主なものについて、ご紹介いたします。

(1)定率減税の半減

 本来の所得税等の額から、一律に控除されていた定率減税を下記のとおり、半減することになりました。
 
        改正前         改正後
 所得税  20%(25万円限度)   10%(12.5万円限度)
 住民税  15%(4万円限度)   7.5%(2万円限度)
 
 本来の所得税額が10万円の人は、20%の定率減税により、負担すべき所得税が8万円となっていましたが、改正後は、9万円となります。

 この改正は、所得税については、平成18年1月の給料支給分から、住民税については、平成18年6月の給料支給分から適用されます。給料計算担当者は、年末に税務署から、新しい源泉税額表が送られてきますので、忘れずに処理する必要があります。


(2)住宅税制

 中古住宅について、税制上の特典を受けるためには、築年数が25年(木造20年)以内という制限がありましたが、一定の耐震基準に適合する場合には、築年数の制限がなくなりました。対象になる、住宅税制は、以下のとおりです。
 
 ・住宅ローン減税
 ・居住用財産の買換え等の譲渡所得税
 ・住宅取得投資金の相続時精算課税
 ・所有権移転登記、抵当権設定登記の登録免許税
 
 
(3)人材投資育成税制

 今年度から、新たに創設された、法人税の減額制度です。中小企業の場合には、支出した研修費の20%の減税を受けられる場合があります。対象になる研修費の範囲は、業務に関係する以下の支出になります。
 
 ・外部への研修委託費
 ・会社が指定した研修への参加費や受講費
 ・研修の講師に対する謝礼、講演料等
 ・研修会場の使用料
 ・研修の教材費                 など
 
 控除額の計算は、何種類かありますので、会社にとって、一番有利なものを選択することになります。また、この規定は、平成17年4月1日以後に開始する決算期から適用開始になりますので、大規模な研修を検討している場合には、実施時期を検討する必要があります。
 
 
(4)国民年金保険料の納付証明書の添付
 
 年末調整や確定申告の際に、国民年金保険料の社会保険料控除を受ける場合には、保険料納付証明書の添付が義務づけられました。
 
 タレントや国会議員の国民年金の未納問題に端を発し、これまでは、金額の記載のみで控除が可能だったものが、証明書を添付しなければ、控除を受けられないことになりました。会社の給与計算の担当者は、証明書の確認という手間が増えることになりますし、自営業者等の確定申告が必要な方は、証明書の保管が必要になってきます。
 
 
 その他にも、改正点がございますので、詳しいことは、当事務所にお問い合わせください。


 

(M.H)

 


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固定資産税

2005年4月4日
(1)固定資産税とは
 固定資産税とは1月1日現在、資産(土地・家屋・償却資産)を持っている人に対してかかる税金です。
 固定資産税の対象となる主な資産は、次のようなものです。
(土地)・・・宅地、田んぼ、畑はもちろん、池や沼、山、なども対象になります。
(家屋)・・・住宅、店舗、工場、倉庫、物置小屋などです。
(償却資産)・・・土地家屋以外の会社で使っている資産で、減価償却費として償却される資産をいいます。ただし自動車は償却資産の対象にはなりません。
(2)税金を納める人
 固定資産税を納めなければいけない人は、原則は資産の持ち主です。持ち主というのは建物や土地の場合、主に登記簿に所有者として登記されている人をいいます。償却資産の場合は、1月31日までに市町村に提出する「償却資産申告書」に所有者として登録されている人になります。
 固定資産税を計算するうえで重要なのは評価額です。土地と家屋の固定資産評価額は3年に1度、評価替えによって見直すことになっています。最近では平成15年度に、実施されました。
 固定資産評価は、国が決めた固定資産評価基準に基づいて実施され、最終的に市町村長が価額を決定します。この価額を課税標準額といいます。具体的な固定資産の評価方法については複雑なのでここでは省略します。
 このように決められた金額が、固定資産課税台帳に登録されます。
 償却資産の課税標準額は、所有者が毎年1月1日現在で所有している資産を申告して、償却資産申告書に記入された金額が課税標準額となります。
 税額の計算方法は、課税標準額×税率(1.4%)で、算出額が納めるべき固定資産税となります。
 今現在はほとんど税率1.4%ですが今後、地方の税収をアップするために税率が引き上げられるかもしれません。
 課税標準額は原則、固定資産評価額をそのまま使って計算するのですが、宅地については税負担の急増を抑えるためなどの目的で、課税標準額を調整するので評価額よりも低い課税標準額を基礎として計算することもあります。
 ただし、同じ行政区域内で固定資産の課税標準額が次の金額に満たない場合は、税金が免除されます。
(土地)・・・30万円 (家屋)・・・20万円 (償却資産)・・・150万円
(3)都市計画税とは
 都市計画税とは、都市のいろいろな計画事業を進めるためにかかる費用の一部を負担するための税金です。1月1日現在、市街化区域内に土地や家屋を持っている人が負担することになります。
 固定資産税の納税方法は、役所から送られてくる納税通知書により、4月、7月、12月、2月の4回に分けて納めることになります。
 その際、固定資産税と一緒に都市計画税も納めることになります。
 税額の計算方法は、おおむね、課税標準額×税率(0.3%)です。
 課税標準額は、基本的には固定資産税と同じく家屋や土地の価格です。
 宅地についても固定資産税と同じように、課税標準額を調整して税負担を抑えられる特例が認められています。
 なお、固定資産税が免税の場合は、都市計画税も課税されません。
 新築住宅の場合一部税額が減税されたり、火災や水害で損害を受けたとかで、特別な事情がある場合など、その他さまざまな減税の特例が認められています。
(4)縦覧制度
 土地や家屋を持っている納税者は、縦覧帳簿で自分が持っている土地や家屋の価格(評価額)を、同一区域内にある土地や家屋の価格と比較することができます。他と比較することによって、納税者が自分の土地や家屋の価格が適正かどうかを見分けることができます。この制度を縦覧制度といいます。
 縦覧帳簿には土地と家屋の2種類があります。それぞれ、所在地や評価額などが記載されていますが、所有者の名前や住所は記載されていませんので、「○○さんの土地の価格を知りたい」というような縦覧はできません。
 縦覧できる人は、あくまで固定資産税の納税者が対象になるので、基本的に納税義務がない人は縦覧することができません。しかし、納税者からの委任状があれば代理人として他人の帳簿を縦覧することができます。
 縦覧期間は、4月1日から最初の納期限の日までです。(ちなみに平成17年度の仙台市の場合は5月2日まで)資産が所在する役所、役場で見ることができます。縦覧による料金は無料ですが、縦覧申請書や本人確認がとれる免許証などが必要になります。
 なお、縦覧帳簿をコピーして持ち帰ることはできないので、メモ帳などを持参することをおすすめします。
(5)閲覧制度
 閲覧制度は縦覧制度と同じく、自分が持っている資産の価格を確認できる方法の1つです。
 閲覧は、市町村に登録されている自分の資産について、価格などを確認することができます。閲覧できる期間は、特に定めはありませんが、平成17年度分は4月1日からとなります。
 閲覧するには基本的に手数料がかかってしまいますが、縦覧期間中であれば特別、全国ほとんどの役所で無料で閲覧することができます。
(6)不服申立て
 送られてきた固定資産税納税通知書の価格以外の内容(所在地や面積)に納得がいかない、という場合はその納税通知書が送られてきた日の翌日から60日以内に、市町村長に対して不服申立てをすることができます。
 固定資産の価格について不満がある場合は、市町村長に対する不服申立てではなく、書面によって各市町村に設置している固定資産評価審査委員会に対する審査の申出となります。審査についても、納税通知書が送られてきた日の翌日から60日以内に申出をしなければなりませんので注意して下さい。
 ただし、評価替えの年以外は基本的に、価格においての不服審査の申出をすることはできません。 

(Y.C)

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愛知万博で節税

2005年4月4日

 予約システムのトラブルや弁当持ち込み禁止など、何かとお騒がせの愛知万博ですが、国税庁では、愛知万博に関する支出について、経費算入を優遇する取り扱いをしています。
 
(1)取引先に入場券を配った場合

 会社が、販売促進の目的で愛知万博の入場券のみを、取引先等に配布した場合には、その入場券の購入代金は、交際費以外の販売促進費等の経費として扱うことになります。
 
 ご存知のとおり、交際費に該当した場合には、中小企業でも、最低限、支出額の10%が経費として認められませんが、交際費以外の経費として扱うということは、全額、経費計上することが可能になります。
 
 ここで注意しなければいけないのは、入場券の配布が、販売促進を目的として行われるものでなければいけないことです。ある特定の人に配布したような場合には、原則通り、交際費となる場合もありますので、注意が必要です。
 
 また、配布するものは、「入場券のみ」ですので、一緒に、会場までの交通費や新幹線の切符などを渡さないようにしてくださいね。
 
 なお、個人事業者の場合には、交際費は、全額経費になります。


(2)愛知万博への社員旅行

 従業員の慰安やレクリエーションとして、愛知万博を見学する場合には、入場券の購入代金、会場までの交通費、宿泊費等については、福利厚生費となり、全額、経費に算入することになります。

 さらに、従業員の家族も一緒に万博の見学を行った場合には、その家族分の入場券等も、同様に福利厚生費として扱うことになります。通常、社員旅行では、家族を同伴し、その家族分の旅費を会社が負担した場合には、その従業員の給与という扱いになり、従業員に所得税がかかることになります。国がやってるだけに、愛知万博については、条件が大幅に緩和されてるんですね。
 
 社員旅行の日程のひとつとして、愛知万博を組み込んだ場合には、通常の社員旅行としての取り扱いになりますので、4泊5日以内や従業員の半数以上の参加等、種々の要件をクリアする必要があります。
 
 詳しくは、こちらを参照ください。


 
(M.H)


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贈与時の名義書換料は取得費に

2005年3月4日

 2月1日、最高裁判所は、「ゴルフ会員権を売却したときの譲渡所得税について、父から贈与を受けたときに支払った名義書換料が取得費になるか」を争った裁判で、取得費算入を認める判決を出しました。地裁、高裁では、取得費不算入の納税者側敗訴でしたが、一転して、納税者側勝訴の逆転判決となりました。
 
 
(1)これまでの取り扱い

 土地・建物の不動産やゴルフ会員権などを売却して、売却益が出た場合には、その売却益に対して、所得税がかかります。売却益は、次のように計算します。
 
売却益=収入-取得費-譲渡経費 (※取得費=購入代金-減価償却費)
 
 相続や贈与で不動産等を取得した場合には、購入代金がゼロですが、不動産やゴルフ会員権の名義を変更するための、登記費用や名義書換料がかかります。
これらの費用は、売却益を計算する際は、取得費として認められていませんでした。


(2)2月14日 通達公表

 国税庁は、最高裁の判決を受けて、今までの取り扱いを変更することになり、早速、2月14日に変更を公表し、HP上に公開しました。
 
 取得費に算入できることになったのは、不動産の登記費用、ゴルフ会員権の名義書換手数料の他に、不動産取得税、株式の名義書換手数料などとなっています。


(3)既に申告してしまった人はどうするか

・平成16年分
 今日(平成17年3月4日)の段階では、確定申告の期間中ですので、3月15日までに「訂正」の申告をすることが可能です。3月16日以降でも、5年間は、還付請求ができますので、混雑している税務署を避けて、のんびり行ってもいいかもしれませんね。
 
・平成15年分
 過去の税金を多く払いすぎた場合に、払いすぎの分を還付してもらう手続きを「更正の請求」といいます。更正の請求は、申告期限から1年間、行うことができますので、平成17年3月15日までに手続きを行うことになります。
 
・平成14年分以前
 更正の請求の期限を過ぎていますが、税務署長の職権によって、還付することが可能ですので、「嘆願書」を税務署に提出することになります。ただし、還付が可能なのは、法律上5年間と決まっていますので、平成10年分以前は、還付を受けることができなくなります。
 
 平成11年分については、手続きの関係上、3月10日頃までに嘆願書を提出しないと、期限に間に合わない可能性が出てきますので、急いだほうがいいですね。
 
 「更正の請求」は、所定の様式がありますので、その用紙を使用することになりますが、「嘆願書」は、様式が任意となっています。自分で作成してもいいですし、「更正の請求」の用紙のタイトルを「嘆願書」に代えて提出することも可能です。


(4)概算取得費で申告した場合

 購入代金がわからなかったり、タダでもらった不動産等を売却した場合には、収入金額の5%を取得費とすることができます。この5%相当額を概算取得費といいますが、概算取得費を使って申告をする場合には、名義書換料等の経費をさらに上乗せすることは、認められていません。
 
 過去に申告した概算取得費よりも、名義書換料等が多い場合には、税金が還付される可能性がありますので、当事務所にご相談ください。

 ちなみに、最高裁で勝訴判決を受けたの人の職業は、税理士です。

 
(M.H)

※内容につきましては、記載日現在の法令に基づき、一般的な条件設定のもとに、説明を簡略しております。実際の申告の際は、必ず、税理士又は税務署にご相談ください。

交際費等は全額経費じゃない!?

2005年2月7日
 交際費等は、会社の売上を伸ばしたり、よい取引先を見つけたりするために使われたお金であれば、会社の必要経費として処理します。
 ですが、税務上の交際費等の扱いはちょっと違っています。この交際費等の中には無駄遣いした金額も含まれていると考えられ、一部が経費として認めてもらえません。
(1)交際費等は全額経費にならない!?
 現在、資本金が1億円以下の会社では、1年間に400万円までの支出した交際費等の90%分は、経費として認めてくれますが、あとの10%は経費にはなりません。
例えば・・・
 「資本金1千万円の会社が年間100万円の交際費等を使いました」
 100万円×90%=90万円
 経費になる金額90万円   経費にならない金額10万円
 になり、10万円に税率約30%分、約3万円が交際費等の税負担になります。
 では、資本金1千万円の会社が年間500万円の交際費等を支出した場合はどうでしょう。その場合でも、限度額400万円の90%、360万円しか経費になりません。あとの140万円は経費になりませんので、使いすぎには注意しましょう。
 資本金1億円を超える会社の交際費等については、全額経費にならず、税金がかかってしまいます。
例えば・・・
 1年で400万円の交際費等を使ったとすると、
 400万円×税率約40%=約160万円
 交際費等だけで約160万円の税金負担が確定することになります。
 赤字決算の場合には、基本的に税負担はありませんが、交際費等の金額によ
って、税負担が発生することもあります。
(2)間違えやすい交際費等
 交際費等は、範囲が広いために他の科目と間違えやすい科目です。
 業者を対象として、抽選会を開催したとします。そのときの賞品にかかる費用は、会社外部の人への贈答として、交際費等として処理することになります。
 ですが、よく商店街で見かける一般消費者を対象とした抽選会の場合は処理が違ってきます。この場合、交際費等ではなく広告宣伝費や販売促進費となり、全額費用として認められます。
 外部の人に賞品をあげたのだから、交際費等になるのでは?と思う方もいるかもしれませんが、対象が不特定多数の人であれば、交際費等にはならず広告宣伝扱いになります。
(3)ゴルフ費用の処理
 ゴルフクラブの入会金は、法人会員で契約した場合「ゴルフ会員権」として貸借対照表の資産の部に計上されることになります。また、そのゴルフクラブに支出する年会費やロッカー使用料等は交際費等になります。
 個人会員としての入会金や年会費等を会社で負担した場合は、その人に対する給与として処理します。
 ゴルフのプレー代については法人会員、個人会員にかかわらず、仕事上必要であれば、交際費等になります。そうでない場合は給与扱いです。
 給与扱いになれば、その人に所得税がかかることになります。さらに会社役員だったら、役員賞与になり、経費になりませんので注意して下さい。
 なお、ゴルフ場へ行くための高速代やタクシー代も交通費ではなく、交際費等となります。なので、帳簿をつける際「〜ゴルフ場タクシー代」のように普通の交通費と区別することが必要です。

(Y.C)

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医療控除から除外する保険金等|仙台市の税理士・ひなた会計事務所

2005年2月7日

 医療費控除とは、1年間に支払った医療費の一部を所得税の計算対象から控除することによって、所得税を軽減させることをいいます。原則として、次の計算式で計算した金額に税率をかけた金額が減税されます。この制度を受けるためには、確定申告が必要となります。

 (支払った医療費-受け取った保険金など)-10万円(※)
       (※)その年の所得によって10万円を下回る場合があります。


(1)対象になる医療費

 基本的に病院や薬局で支払った医療費であれば対象になりますが、一部対象にならないものもありますので、申告の際には、注意が必要です。以下に、主な具体例を挙げておきます。

 医療費控除から除外されるもの

・医師への謝礼
・健康診断の費用(健康診断により疾病等が発見された場合を除く。)
・ビタミン剤などのいわゆる健康食品の購入代金
・美容整形の費用
・通院のためのガソリン代


(2)出産費用

 出産費用は一時期に多額の医療費が発生しますので、控除を受けようと考えている方も多いと思いますが、その際は、以下の点に注意してください。

・妊娠と診断されてからの定期検診や検査などの費用、入院費は医療費控除の対象になります。

・タクシー、電車、バス等の通院費用は、医療費控除の対象になりますが、領収証がない場合には、家計簿やメモにより支払額を明確にしておきます。

・健康保険などから出産育児一時金や配偶者出産育児一時金などが支給されますので、その金額は医療費控除の額を計算する際に医療費から差し引かなければなりません。市町村によっては、「お祝い金」としているところもありますので、注意してください。


(3)歯の治療費

 歯の治療も保険が適用されずに医療費が高額になる場合がありますので、申告の際は次の点に注意してください。

・保険のきかない自由診療のうち、一般的な治療については、医療費控除の対象になりますが、必要以上に高額な材料を使用したり、容貌を美化したりするための治療は対象になりません。

・歯の治療費を歯科ローンにより支払う場合には、信販会社への金利や手数料相当分は、医療費控除の対象となりません。また、病院から領収証を発行されなかったときは、ローンの申込書等を用意してください。


(4)その他の注意点

・介護サービスも対象となるものがあります。

・医療費控除は、1月1日から12月31日を計算期間としますので、治療が年をまたいだ場合には、それぞれの年ごとに医療費の計算を行います。例えば、合計で17万円(12月に9万、1月に8万)の支払をした場合には、医療費控除を受けられない場合があります。

・原則として、領収証の提出又は提示が必要です。


(5)受け取った保険金等とは

 医療費控除を計算する際には、支払った医療について保険金等で補てんされた金額を、控除金額から除外することになっています。対象となる保険金等は、下記の通りです。
 
・健康保険等から受ける、高額療養費、移送費、出産育児一時金等
・損害保険、生命保険、共済等から受ける医療保険金、入院費給付金、傷害費用保険金等
・医療費の補てんのために受け取る損害賠償金
・互助会等から医療費の補てんのために受け取る給付金

 高額の入院給付金を受け取れる医療保険に加入していると、負担した入院費より、受け取った保険金のほうが、大きい場合があります。このようなときは、その入院費については、医療費控除の対象から除外することになります。ただし、オーバーした分は、他の医療費と相殺する必要はありませんので、他の医療費の合計が10万円を超えれば、医療費控除を受けることができます。


(6)保険金が未確定の場合

 12月の入院の分を保険会社に請求したところ、3月15日の確定申告期限までに入金されなかった場合には、一旦、概算額で確定申告を行うことになります。給付額が確定して、概算額と差額がある場合には、後日、訂正を行うことになります。結構、面倒なんですね。


(7)出産手当金

 健康保険に加入している本人が、子供を出産した場合には、出産育児一時金と出産手当金が支給されます。

 出産育児一時金は、1児につき30万円が支給され、上記に記載のとおり、医療費から控除することになります。
 
 出産手当金は、産前産後に会社を休んだために、受けることができなかった給料を補てんするために支給されます。医療費の補てんのために支給されるものではありませんので、医療費から控除する必要はありません。


(8)職員互助会からの給付金

 会社の互助会や親睦会から、医療費の補てんのために入院給付金を受け取ったときは、たとえ、任意の団体から受け取ったものでも、医療費の補てん目的であれば、医療費から控除する必要があります。
 
 ただし、入院という事実だけに基づいて、社交上の儀礼として支給される入院見舞金であれば、控除する必要はありません。


(9)交通事故の慰謝料を受け取った場合

 交通事故にあい、加害者側の保険から、慰謝料や保険金が支給された場合には、医療費の補てん目的で支給されたものであれば、医療費から控除することになります。
 
 また、慰謝料という収入が発生していますが、この受け取った慰謝料は、非課税となっています。

 

(M.H)


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費用が資産に!?

2005年1月13日

(1)繰延資産とは

 会社で支出する費用のうち、支出の効果がそのときだけでなく1年以上に及ぶものを繰延資産といいます。

 繰延資産は車両などの固定資産の減価償却と同じで、期間に分散して費用化していくことが認められています。その間は資産計上して、未償却分を繰り延べていくから繰延資産というのですね。

 繰延資産は大きく2つに分けることが出来ます。
 1つは商法でも認められている「商法上の繰延資産」で、6種類あります。

 もう1つは「税法上の繰延資産」です。税法では商法で挙げられているものとは別に、繰延資産として資産計上しなければならないものがあります。例えば、公共的施設や共同的施設(商店街のアーケードなど)の負担金がこれにあたります。(20万円未満は資産計上不要)

 ここでは、商法上も認められている繰延資産について説明していきます。

(2)商法上も認められている繰延資産

・創業費
 会社設立に必要な設立諸費用や発起人への報酬、設立登記の登録免許税などに支出した費用です。

・開業費
 会社設立後、営業を始めるまでの開業準備のために特別に支出した費用です。
 「特別に支出した費用」なので、常に発生する費用は含まれません。

・新株発行費
 会社設立後、新たに株式を発行するために支出した費用です。
 株券の印刷費や、増資にあたっての登記の登録免許税などが該当します。

・社債発行費
 社債を発行するために支出した費用です。
 社債券の印刷費や、社債の登記の登録免許税などが該当します。

・社債発行差金
 社債を額面金額未満で発行した場合の、額面金額と発行金額との差額です。

・建設利息
 会社を設立しても2年以上にわたって開業できない場合に、株主に配当する利息です。

 以前は試験研究費と開発費も繰延資産として計上出来ました。しかし、2000年3月期からは支出があった決算期に一括費用処理することになりました。

(3)繰延資産の会計処理

 商法でも認められている繰延資産(社債発行差金は除く)については、商法上早く費用化することが要求されているので、税法もそれを考慮して自由に償却することを認めています。

 自由に償却出来るということは、支出額の範囲においていつでも、いくらでも費用に計上してもよい、ということです。

 商法では早く費用化するために、それぞれ次のように償却期限が定められています。

・創業費、開業費
 創業、開業後5年以内に最低5分の1以上を毎期償却

・新株発行費、社債発行費
 発行後、3年以内に最低3分の1以上を毎期償却

・社債発行差金
 社債の償還期間にわたって償却

 赤字が出そうな場合はその期の償却額を少なくして費用を抑えることが出来ます。また、利益が出そうな場合は一括で償却して利益を抑えることが出来るので、税金対策にもなります。

 

(Y.C)

 

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売上代金が回収不能になった場合の処理(貸倒損失)

2005年1月7日

 月末に入金予定だった売掛金が、相手先の倒産などにより、回収できないことがあります。回収不能のことを「貸倒」といいますが、この回収できなかった金額を、貸倒損失として経費にするためには、税法上の様々な基準をクリアしなければなりません。

 基準をクリアしないまま経費処理をすると、寄附金という扱いになり、資本金や利益金額に応じて、経費算入できない金額が出てきます。貸倒処理には、十分な検討が必要ですので、事前に必ず相談してくださいね。


(1)債権の全部又は一部が切捨てられた場合

 次に掲げるように、法的整理等によって、債権の切捨てが確定した場合には、その切捨てられた債権の金額を、強制的に損失に計上しなければなりません。

 ・会社更生法等による更生計画の認可の決定があった場合
 ・民事再生法による再生計画の認可の決定があった場合
 ・商法による特別清算の認可、若しくは、整理計画の決定があった場合
 ・破産法による強制和議の認可の決定があった場合
 ・債権者集会で、合理的な基準により協議決定があった場合
 ・第三者の斡旋による協議で、合理的な基準により債権切捨の契約があった場合
 ・長期間債務超過の会社に対して、書面により、債務免除の通知をした場合

 最初4つは、裁判所に申し立てをして手続を行うことになりますが、申し立てをした段階では、貸倒引当金の計上という形で、債権の50%程度を、経費に計上することができます。最終的な債務整理の決定がおりるまで、何年もかかる場合がありますので、債務整理が現在どのような状況なのか、チェックをしていく必要があります。

 最後の書面による債務免除(債権放棄)は、一般的には、内容証明郵便を利用し、証拠を残すようにします。また、一方的に債権放棄を通知しても、債務者に返済能力がある場合には、寄附金として取り扱われ、経費算入に制限が出てきます。


(2)全額回収不能見込の場合

 相手の資産状況や支払能力等から見て、債権全額の回収ができないことがわかったときは、その時点で、全額を貸倒として経費に計上することができます。
 
 (1)の法的整理等の場合には、強制的に経費に算入されますが、(2)の場合には、自主的に経費に算入するという意思表示をしなければなりません。回収不能が判明した時点でしか、経費算入ができないという規定になっていますので、経費算入の意思表示をしなかった場合には、法的整理等が行われるまで、経費算入ができない場合も出てきます。
 
 また、全額回収不能が条件ですから、一部でも回収の見込がある段階でこの規定を適用しても、貸倒とは認められず、寄附金の扱いになることがあります。
 
 担保を取っているときは、担保分の回収可能性がありますので、担保を処分した後の残りの債権を、経費処理することになります。


(3)1年以上取引がない場合等

 得意先との取引がなくなってから、1年以上経過した場合には、次の金額を貸倒として経費に計上することができます。
 
 貸倒金額=債権金額-1円(備忘価額)
 
 なお、債権は、売掛金や未収請負金等の売掛債権だけが、この規定の対象であり、貸付金や未収利息等は含まれません。また、取引停止をいつと見るかですが、得意先と直接の接触をせずに、振込で入金があった場合には、その入金日となります。取引停止には、継続的に取引を行っていることが前提になりますので、たまたま、一度だけの取引が回収不能になった場合には、対象になりません。
 
 そうそう、担保がある場合には、この規定は使えませんので、注意してください。

 さらに、同一地域の売掛債権の合計額が、旅費等の回収費用を下回り、督促をしても回収不能の場合には、上記と同じように、債権金額から1円を引いた金額を、貸倒として経費に計上することができます。

 この規定も、担保がある場合には、使えませんよ。


(5)貸倒処理した債権が回収できた場合

 既に回収不能として処理した債権が、ひょんなことから回収できたとします。こんなときは、あきらめていたものが回収できたということで、なんか、儲かった気がしますよね。
 
 経理上も、「気」だけじゃなく、本当の儲けとして、収入に加算しなければいけません。収入に計上する金額は、既に貸倒として経費処理した金額ではなく、実際に、回収した金額になります。このようなときの勘定科目を「償却済債権取立益」と言います。


(6)ゴルフ会員権の預託金

 民事再生法により、ゴルフ会員権の預託金の切捨があった場合には、その切捨てられた金額は、会社の貸倒として経費に計上されます。

 会社所有の場合には、経費に計上できますが、個人所有の会員権の切捨があった場合には、個人の所得税からは、何も控除されないことになります。含み損の出ている会員権は、ゴルフ場が破綻する前に、売買により譲渡損失として確定しておくことが必要です。

 

(M.H)

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青色申告の特典

2004年12月6日

 あなたの会社は青色申告法人ですか?

 わからなくても、青色申告法人か白色申告法人かを、すぐに確認できる方法があります。 法人税申告書の別表1の用紙が青色であれば、あなたの会社は青色申告法人です。

 そもそも、青色申告をして何になるの?白色申告と何が違うの?と思っている方もいると思います。


(1)青色申告の特典

 簡単に言うと、青色申告をすると税法上、白色申告には認められていない様々な特典が認められています。
 主な特典を紹介します。

・当期に発生してしまった赤字を、翌期以降最高7年間繰り越すことができる!
 
 なぜこれが特典になるのかというと、会社に利益が出れば当然、その分の税金を払うことになります。

 でも、青色申告で前期までに赤字を出していた場合、当期の利益と前期までの赤字を相殺することができるのです。
 前期までの赤字が2期以上の事業年度で発生している場合、最も古い事業年度に発生した赤字から順に控除します。

 つまり、前期までに発生してしまった赤字を、利益で埋めてしまうまでは税金を納めなくてもすむということです。

 平成16年の税制改正によって、赤字の繰り越し期間が5年から7年に延長されました。平成13年3月31日より前に始まった、事業年度に発生した赤字の繰り越し期間は5年間となりますので注意しましょう。

(設立5期まで限定)
・赤字を繰り戻して、1年だけさかのぼって納めた税額を返してもらえる!

例えば・・・

 前期は、売上がバンバン伸びて、利益を出して税金を納めたのに、当期はぜんぜん売上が伸びなくて赤字になってしまった。
 というような場合は、1年だけさかのぼって納めた税金を返してもらうことができます。

 解散等の場合を除き、平成4年4月1日から平成18年3月31日までの間に終了する各事業年度に発生した赤字については、この還付制度は適用できません。
 また、税金を支払った事業年度から、赤字発生の事業年度までの各事業年度について、申告期限内に青色申告で提出していなければ、還付請求をすることはできません。
 
 ここでは2つの特典を紹介しましたが、この他にも様々な特典があります。


(2)青色申告の適用要件

 では、どんな会社でも「青色申告をしたい!」と言えば認められるのか、というとそうもいきません。
 
 青色申告には様々な特典があるかわりに、様々な適用要件があります。その要件をクリアすることが必要です。

 青色申告を認めてもらおうとする会社は、申告書を提出しようとする事業年度が始まる日の前日までに、青色申告の承認申請書を税務署長に提出しなければいけません。

 ただし設立第1期目については、設立日から3ヶ月後と、決算日とのどちらか早い日の前日までに申請することが必要です。


(3)個人青色申告

 青色申告は会社だけではなく、個人の所得税にも認められています。

 所得税青色申告にも、会社の青色申告と同じで様々な有利な特典があります。主なものをあげると、

・最高65万円の青色申告特別控除

 所得の金額から最高65万円を控除することができます。
 貸借対照表、損益計算書、金額計算に関する明細書を申告書に添付する必要があります。
 平成16年の税制改正でこれまでの55万円の控除から65万円の控除に改正されました。よって、65万円控除は平成17年分の申告から適用となります。

・青色事業専従者給与の経費算入
・貸倒引当金の必要経費算入
・減価償却の必要経費算入  など
そのほか、所得税の青色申告の特典はまだまだたくさんあります。

 適用要件をクリアし、税金上お得な青色申告をおすすめします。
 

(M.H)

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経費の先取り引当金

2004年11月5日

 月末に入金予定だった売掛金が、相手先の倒産などにより、回収できないことがあります。回収不能のことを「貸倒」といいますが、この回収できなかった金額は、貸倒損失として、経費になります。
 
 このように、売掛金などの債権には、回収不能というリスクがつきまといます。税法では、回収不能リスクを経費として先取りする方法が認められています。この方法を、貸倒引当金の繰入といいます。
 
 経費を先取りできる引当金は、いろいろありますが、税法で認められているものを下記に紹介します。


(1)貸倒引当金

 金銭債権の回収不能に備えて計上する引当金を、貸倒引当金といいます。計上できる金額は、期末の債権額に対して、業種ごとに、次の率となっています。
 
 ・卸売業及び小売業(法人)・・・・・・・1.0%
 ・製造業(法人)・・・・・・・・・・・・0.8%
 ・その他の事業(法人)・・・・・・・・・0.6%
 ・個人事業・・・・・・・・・・・・・・・5.5%
 
 破産や手形の不渡り等が発生した場合には、回収できないと予想される金額を見積もって、経費に計上することができます。


(2)返品調整引当金

 売れ残った商品に対して、販売価額による買い戻しをする特約を結んでいる場合に、その買い戻しにより生じる損失の見込額を計上する引当金を、返品調整引当金といいます。計上できる金額は、過去の返品率をもとに計算した金額です。
 
 ただし、対象業種が限られており、出版業、医薬品販売、化粧品販売、CD販売などとなっております。


(3)退職給与引当金

 退職金制度を導入している場合に、将来の退職金支出に備えて計上する引当金を、退職給与引当金といいます。この引当金は、平成15年に廃止され、現在は、過去に計上した退職給与引当金を、強制的に、10年間で利益に振り返ることとされています。

 税法では廃止されましたが、会計では、「退職給付会計」として、計上が義務づけられています。


(4)準備金制度

 引当金制度は、会計上も認められている制度ですが、政策上の理由から、引当金と同じように、経費の先取りができる、「準備金」の制度が、税法では、認められています。
 
 主なものに、海外投資等損失準備金や特別修繕準備金がありますが、この制度が使えるのが、資源を開発する法人や船舶の修繕など、特殊なものに限られています。
 
 
(5)引当金の戻入

 引当金は、経費の先取りですから、将来、その経費が発生しなかった場合には、その先取りした経費は、戻さなければなりません。過去にさかのぼって戻すことはできませんから、発生しないことが確定した年に、利益に加算します。

 

(M.H)

 

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建物修理はすべて経費になるか

2004年11月5日

 会社が事務所などの修繕をした場合に、支払ったときに、全額「修繕費」として会社の経費になるわけではありません。
 
 支払時に経費になるかどうかは、修繕の内容に判断することになり、修理をした結果、事務所建物の使用できる期間が長くなった場合には、修繕費ではなく建物の追加取得になります。

 建物の追加取得となった場合には、決算において減価償却費を計上することになります。減価償却は耐用年数によって、毎年、費用配分していきますから、支払った金額全て経費になるには、何年もかかってしまいます。


(1)資産の取得になる場合

 会社が所有している資産の修理、改良等のために支払った金額のうち、修理によってその資産の使える年数が延長されたり、地震等にも耐えるように資産を改良し、耐久性等が増したと認められる部分の金額は資産の取得となります。

例えば、次のようなものは、資産の取得となります。

1.会社と物置とをつなぐ廊下の取り付け工事費用など、明らかに建物自体につけ加えた部分の金額

2.会議室の部分を車庫スペースに変えたとか、建物の使用目的を変えるための改造や改装にかかった金額

 修繕の内容により、判断するわけですが、例外があり、次のどちらかにあてはまる場合は、資産の取得になるかならないかの判定をすることなく、修繕費として経費処理することが認められています。

・修理、改良等にかかった金額が20万円未満の場合
・だいたい3年周期で行われる、修理、改良等の場合


(2)修繕費になる場合

 修繕とは本来、使っているものの働きを維持したり、もとの状態に戻したりすることをいうので、修繕費とは、建物や機械の働きをそのまま維持するために支払った金額をいいます。

 しかし実際には、修繕にかかった金額が、資産の取得になるのか、ものの働きを維持するためのものなのか判断しにくい場合があります。

 資産の取得になるのか修繕費になるのか、判断がつかない場合には、次のいずれかに該当するときは、経費処理することを認めています。

1.修繕にかかった金額が60万円未満だった場合
2.修繕にかかった金額が、修理した資産の取得価額の10%以下だった場合

例えば、3年前に1500万円で建てた事務所を100万円かけて大修理しました。判断がつかないので、請求書を見ると、「事務所工事代 100万円」としか書いておらず、修理にかかった部分と、資産取得の部分の区分がわかりませんでした。

 この場合、1500万円の10%(=150万円)以下になるので上記2から、経費処理することになります。

 明らかに、建物を増築したというような場合は、初めから資産の取得になります。


(3)税金負担への影響は

 さて、資産の取得として処理した場合と、修繕費として処理した場合では税金の負担は変わってくるのでしょうか?

 修繕費と判断された場合には、支払額全額が、その年の経費になり、利益が減少しますから、その年の税負担は、少なくなります。
 
 資産の取得と判断された場合には、減価償却によって毎年、費用配分されることになります。支払った年に計上できる経費が少なくなりますので、その年の税負担は、逆に増えることになります。
 
 資産の取得になるのか修繕費になるのか適切に判断することが重要です。そのためには、業者まかせではなく、見積書、請求書等にも細かく目を通しておくことが必要です。

 

(Y.C)

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クレジットカード決済

2004年10月6日

 会社の経費をクレジットカードで支払ったときの領収証や利用明細書って、どうしてますか?まさか、そのまま、捨ててしまうなんてことはないですよね。

(1)消費税における請求書等の保存

 当たり前と思われるかもしれませんが、消費税では、請求書や領収証(以下、「請求書等」)の保存が義務づけられています。そして、その請求書等には、次の事項が記載されていなければなりません。

 ・支払先の氏名又は名称
 ・取引年月日又は支払年月日
 ・取引の内容
 ・取引金額又は支払金額
 ・こちらの氏名又は名称(支払先が小売業の場合は省略可)


(2)クレジットカードでの決済

 クレジットカードで買い物をすると、後日、カード会社の締め日ことに集計した、請求明細書が送られてきます。この明細書があれば、買い物のときに渡される、レシート等は不要だと思っていないでしょうか?

 カード会社から送られて来る請求明細書に記載されているのは、年月日、店の名前、金額は記載されています。しかし、(1)の3つめ、「取引の内容」が、請求明細書には、記載されていないことが、多いのです。

 「取引の内容」が記載されているのが、買い物のときに渡されるレシート等になりますので、保存する必要が出てくるわけです。捨ててしまうと、消費税を余分に払うことになります。

     カード会社によっては、「電気代」のように、取引内容が掲載されている場合があります。その場合には、カードの利用明細の保存でよいことになります。


(3)金額が3万円(税込)未満の場合

 実は、1回の買い物が税込で3万円未満の場合には、レシート等の保存をしなくてもいいことになっています。

 と、言うことで、3万円以上の買い物のときは、レシート等の保存をお忘れなく。


(4)領収証がない場合

 3万円以上の買い物でも、自動販売機で購入したり、乗車券等のように、回収されてしまって、領収証等が無い場合には、例外として、領収証等を保存しなくてもいいことになっています。

 また、相手方に領収証等を発行してもらうように要求したにもかかわらず、相手方が、領収証等をくれない場合にも、例外として、保存しなくてもいいことになっています。

 このような場合には、鉄道会社や航空会社を除き、帳簿に、年月日、支払先の住所及び氏名又は名称、取引内容、支払金額、保存できない理由を記載しなければいけません。


(5)注意点

 レジで買い物をしたあとに、レシートとは別に、領収証を発行してもらう場合があります。そのときに、但し書きに「品代」と記載してもらったりしますが、「品代」では、取引の内容がわかりませんので、面倒でも、購入したものを記載してもらってください。

 また、「上様」も、こちらの名称ではありませんので、きちんと名称を記載してもらってください。(小売業の場合には、省略できます。)

 

(M.H)

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納税・申告が遅れたら罰金!?

2004年9月4日

 関西電力では、平成15年3月期(申告期限 平成15年6月2日)の消費税の確定申告を、手続きミスから忘れてしまい、約10日遅れで提出しました。納税のほうは、きちんと納期限に済んでいたのですが、申告が遅れたというペナルティーとして、12億円の無申告加算税が課税されたのです。
 http://www.kepco.co.jp/pressre/2004/0720-3j.html

 単なるうっかりミスのようですが、関西電力ほどの大企業になると、納税額が247億円という大きな金額になることから、追徴される金額も、莫大なものになってしまいます。

 税金には、申告期限や納付期限が定められています。その期限を過ぎてしまうと、罰金的な意味合いで、追加の税金がかかることになります。その追加の税金のことを附帯税といいます。以下に、具体的内容を示します。


(1)延滞税

 法定の納期限までに、国税を納付しなかったときには、納期限の翌日から納付日までの期間に応じて、年4.1%の率で延滞税がかかります。延滞税は、完納までの期間が、長くなればなるほど、率が上がっていくことになります。納期限から、2ヶ月が過ぎると、年14.6%という、サラ金並みの利率になってしまいます。
 
 100万円の税金を30日間延滞すると、次のようになります。
 
 1,000,000円×4.1%×30日÷365日=3,369円→3,300円(百円未満切捨)
 
 なお、納期限から1年を経過した場合には、原則として、それ以後の延滞税の計算は停止されます。だからって、納めないでいると、差し押さえの可能性もありますので、税金は期限内に納めましょう。
 
 
(補足)

 納期限から2ヶ月までの期間の利率は、毎年変わります。前年11月30日現在の公定歩合に4%を加算した率が、その年の延滞税の率になります。平成15年11月30日現在の公定歩合は、0.1%でしたので、0.1+4=4.1%となるわけです。
 現在は、公定歩合が低くなっていますが、今後上昇した場合でも、7.3%が上限となります。


(2)過少申告加算税

 期限内に申告書を提出した場合でも、その後、修正申告等で、税額が当初申告した金額より増加した場合には、その増額した金額の10%相当額の、過少申告加算税が追加せされます。
 
 ただし、修正申告書が税務署の調査が入る前に提出されたときは、過少申告加算税は賦課されません。申告後に何か、ちょっとした間違いがあったときは、早めに修正申告書を提出すると、余計な出費が無くなりますね。
 
 なお、修正申告等で増加した金額が、50万円を超える場合等一定の場合には、15%相当額の過少申告加算税が加算されることもあります。


(3)無申告加算税

 申告期限内に申告書を提出しないで、期限後に申告書を提出した場合には、15%の無申告加算税がかかることになります。

 こちらは、税務署が調査に入る前に、期限後申告書を提出したときは、15%
ではなく、5%が加算されることになります。
 
 上記の関西電力の場合には、調査前に提出しましたので、5%加算というこ
とになったんですね。


(4)不納付加算税

 給料等から天引きした源泉徴収税額を、納期限までに納めなかった場合には、10%の不納加算税が加算されます。源泉徴収税額は、納付=申告となりますので、加算税の名称がちょっと変わってるんですね。
 
 こちらは、税務署の調査が入る前に、納付をした場合には、加算されるのは、5%となります。
 
 納付をしませんと、毎年2月と8月頃に、直前半年分の税額の確認が行われ
ます。この確認が行われる前に納めれば、加算される金額は、5%で済むわけですね。


(5)重加算税

 修正申告書等を提出し、過少申告加算税の対象になる増加税額ある場合に、その増加した税額が、仮装、隠ぺいによるとき(いわゆる脱税をしたとき)は、15%の過少申告加算税ではなく、35%の重加算税が加算されることになります。
 
 これが、無申告の場合に脱税をしていると、40%の重加算税になります。脱税をしている方は、見つからないように注意してください。じゃなくて、脱税は割に合いませんから、やめときましょうね。


(6)延滞金、加算金

 (1)~(5)は、国税についての説明でした。事業税等の地方税にも、延滞金や加算金がかかるものがあります。ただし、延滞金の利率が4.1%となる期間は、2ヶ月ではなく、1ヶ月となりますので、注意が必要です。




 

(M.H)

※内容につきましては、記載日現在の法令に基づき、一般的な条件設定のもとに、説明を簡略しております。実際の申告の際は、必ず、税理士又は税務署にご相談ください。

公示制度(長者番付)

2004年8月4日

 毎年5月になると、その年に行われた確定申告に基づいて、所得税額のランキングが発表されます。いわゆる長者番付というものですね。一般的には、所得税について、マスコミで大きく取り扱われますが、実は、所得税以外にも、法人税や相続税でも、公示される制度があるんです。
 
 公示方法というのが、各税務署の掲示板に掲示されるだけですので、税務署に用がなかったりすると、なかなか目にする機会が少ないかと思います。でも、よく見ると、意外な発見をしたりできるんです。
 
 税目ごとに、その違いを説明いたします。


(1)所得税

 所得税は、前年分をその年の2月16日から3月15日までの間に申告しますが、公示は、3月31日時点で、所得税額が1,000万円以上の者について、公示が行われます。これが、いわゆる長者番付となるものです。
 
 3月31日が、公示するかどうかの判定日になりますので、申告期限は過ぎてしまいますが、4月以降に申告をした場合には、所得税額がいくらになっても、公示の対象からはずれることになるわけです。
 
 この方法を使って、公示からはずれたのが、セコムの親族といわれています。


(2)法人税

 法人税にも公示制度があります。所得税と違うのは、公示の基準で、法人税の場合には、所得が4,000万円超が公示対象となります。また、法人の場合には、申告期限は、法人ごとに違いますので、とにかく、提出された申告書が、4,000万円超のものであれば、公示されることになります。しかも、申告書の種類は、申告期限内の確定申告の他、期限後に行う、修正申告も対象になります。
 
 通常は、申告期限から、1,2ヶ月後に、税務署の掲示板に掲示されますが、掲示内容をよく見ますと、3期連続で公示されている会社があったりします。恐らくこれは、税務調査等があり、3期分の修正申告を行ったのではないかという想像ができます。意外に有名企業が、修正申告をしてたりしますので、たまに、税務署の掲示板を見てみるのもいいですよ。
 
 修正申告で公示される方としては、できれば、載りたくないというのが心情でしょう。法人税の場合にも、裏技があり、修正申告は、公示対象になりますが、税務署長が職権で行う、更正や決定の手続きの場合には、公示対象から、はずれることになります。
 
 
(3)相続税

 相続税の場合には、亡くなった方の財産総額が5億円超の場合か、もらった財産の金額が2億円超の場合に、公示の対象になります。こちらも、税務署の掲示板に掲示されることになります。
 
 この公示を見ると、亡くなった方がどのぐらいの財産を持っていたのか、また、誰がどのぐらいの財産を相続したのかということを知ることができます。プライバシーも何もあったものではないですね。

 

(M.H)

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同族会社に関する規定

2004年8月4日

(1)同族会社とは

 同族会社とは、株主のうち、上位トップ3の株主の持ち株割合が、発行済株式の50%超を占める会社をいいます。「会社」が対象ですので、協同組合や医療法人は、除外されます。
 
 持ち株割合の計算は、親族を同一株主とみなすなど、細かな計算規定がありますので、株が分散している会社の場合には、注意が必要です。(と、言っても、ほとんどの会社は、社長一族の持ち株だけで、50%を超えると思いますので、あまり気にしなくてもいいかもしれませんね。)


(2)同族会社の留保金課税

 同族会社については、1年間の利益が一定金額を超えると、通常の法人税に上乗せする形で、法人税が余分にかかる仕組みとなっています。上場会社などには、通常の法人税しかかからないのに、同族会社というだけで、税金が増えてしまうんですね。
 
 これは、同族会社となると、会社も個人も財布は一緒という感覚になり、配当等をあまり行わなくなり、会社にお金を貯め込む傾向が出てきます。そうなると、国は、配当金に対する税金を徴収できるはずが、その分税収が減ってしまうので、会社から上乗せして徴収しようということになったんですね。
 
 上乗せされる金額は、課税留保金額に次の税率をかけた金額です。
 
 年3,000万円以下の金額 ・・・・・・・・・10%
 年3,000万円超年1億円以下の金額・・・・・15%
 年1億円超の金額 ・・・・・・・・・・・・20%
 
 なお、課税留保金額とは、次の算式により計算します。
 
 課税留保金額=(イ)-(ロ)

 (イ)留保金額=利益-法人税等-役員賞与-配当金
 
 (ロ)留保控除額=次の3つのうち、最も大きい金額
 
 ・利益の35%
 ・年1,500万円
 ・期末資本金×25%-期末利益積立金


(3)留保金課税の適用停止

 次に該当する場合には、法人税に上乗せされる、留保金課税がかかりません。
 
・新事業創出促進法に規定する、設立10年以内の中小企業者
 
 中小企業者の要件は、業種に応じて、資本金や従業員の数に制限があります。
 
 製造業・・・・資本金3億円以下又は従業員300人以下
 卸売業・・・・資本金1億円以下又は従業員100人以下
 サービス業・・資本金5,000万円以下又は従業員100人以下
 小売業・・・・資本金5,000万円以下又は従業員50人以下
 
 基本的に、設立10年以内の中小企業は、留保金課税が免除されることになりますが、創業時から、多額の利益ってそう簡単に出るものなんでしょうか。
 
・新事業創出促進法に規定する認定事業者

・資本金1億円以下で、自己資本比率(A/B)が、50%以下の会社
 
 A:自己資本+株主からの借入金
 B:A+負債


(4)役員としての取り扱い

 役員への給与には、経費算入に、様々な制限が設けられています。それに対して、使用人への給与には、特に制限はありません。同族会社は、役員就任について融通が利きますので、わざと使用人の立場にして、給与を経費に算入することがあります。
 
 本来は役員とすべき人を使用人にして、その人の給与を、制限なく、経費に算入する会社が出てくることになります。税法では、それを防ぐために、同族会社の使用人でも、役員として扱われることがあります。
 
 経営に参加している場合には、きちんと役員として就任させるほうがいいで
しょう。


(5)行為計算の否認

 同族会社の場合には、税務署長の職権で、強制的に収入を増加させたり、経費算入に制限を設けることが、できることになっています。
 
 同族会社は、株主=役員という場合が多く、経営監視の目が実質的に、無きに等しくなっておりますので、通常の会社では行わないような取引を、行う場合があります。例えば、関連会社に対して、通常の値段の半分で、商品を販売したり、株主に低利で資金を貸し付けたりすることがあります。
 
 その取引を行った結果、税金の負担を不当に減少させた場合には、税務署長は、その取引がなかったものとすることができます。

 

(M.H)

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